【おそ松さん】隣におそ松くん【おそ松】 (ページ8)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:7,045 hit

隣に 8 ページ8

.

｢…ねーねー、お姉さんいっつもこの席にいるよね。｣

｢……へ？｣

思えば出会いはおそ松くんが声をかけてくれたことから始まる。

それは、私が入社したての頃桜の花がひらりひらりとまう季節だった。

平日には似つかわしくない赤色パーカーで無邪気な子供のような笑顔を浮かべていたことはよく覚えている。

｢俺もよくここで競馬新聞読んでんの。｣

｢は、はぁ。｣

変な人もいるもんだなぁと思いながら警戒心丸出しで他人行儀な言葉を述べると彼は苦笑しながら｢隣いーい？｣と聞いてきた。

｢ここは皆の物ですし。｣

｢お、マジでー？ありがと。じゃあ失礼しまーす！｣

隣でペラペラと新聞を捲る人物が気になって気になって仕方なくて思わずじーっと眺める。

その視線に気づいたおそ松くんはこっちを見てどこか照れくさそうに笑った。

｢なに？競馬興味あるの？｣

｢あ、あ…ごめんなさい。平日の昼間から競馬新聞ってお若いのに…と。｣

｢そりゃ俺ニートだしねぇ。これくらいしかする事ねーの。｣

｢に、ニート…？｣

｢そ、ニート。遊んで過ごすのは楽しいよ～？お姉さん思いつめた顔してるし少しは肩の力を抜いたら？｣

｢え？…そんな顔してます…？｣

｢うん、めっちゃ顔曇ってる。察するに…新社会人だろ？｣

｢あ、は、はい。｣

ズバリ言い当てられて慌てて背筋を伸ばす。

その様を見て彼は肩を揺らしくつくつ喉の奥から声を出して笑う。

｢俺、松野おそ松。おねーさんの名前は？｣

｢私は笹谷Aです。｣

｢そんな堅苦しくなくていーよ。おそ松とでも呼んでよ。おねーさんのこと名前呼びでもだいじょーぶ？｣

｢あ、う、は…うん。大丈夫。｣

｢ん、俺普段は平日来ないけどさ、松代が競馬新聞取ってくんないから日曜の午後によく来んの。…また会えたらいーねAちゃん。

じゃ、またね～。｣

競馬新聞を片手に立ち上がったおそ松くんはそのまま私に背を見せて去って行く。

思えばこんな関係が一年も続いていた。

日曜の午後一時付近、それは隣におそ松くんがいる一時の楽しい時間。

.