奇病専門の病院内の日常風景。【リレー小説】【募集企画】 (ページ4)

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「…あ、そろそろか、な…」

東棟の仮眠室からは朝日が良く見える。
この朝日を、私は一番最初に浴びている…と思う。
なんだか、神様を独り占めしているみたいでちょっと嬉しかったり。

この時間だけは、静かに私自身と向き合えるからとても気に入っている。
こうして柔らかい橙色の光に当たりながら、ただ何をするでもなくぼぅっとしていると、いろいろなことを思えるのだ。

優しい院長先生の事。

ゆっくりで心地いい病院生活の事。

柏と一緒に食べるお菓子やその時に話す会話の内容の事。

学校の課題の事。

そういえば、あの父親は散々私を厄介払いしておいて学費はちゃっかり払っているらしい。

現に私は退学処分にはなっていないが…いつなってもおかしくは無い。

あぁ、恐ろしや。

私はその事を思って少しだけ身震いした。

駄目だ、今は考える必要は無いでしょう。
父が払うと言っているんだから素直に甘えていなさい。いいね？うん。わかった。

って、なんで一人二役を演じているんだ…
そして…父の顔が浮かべば自ずと浮かんでくる。

私と同じ病で死んだ______________母の顔。

私よりも酷い症状だった。全身が緑や青や紫で色とりどりに染まっていた。
肌なんか茶色やら赤やら白やらで、まるで絵具の缶をぶちまけてしまったみたいで。
それでも微笑んで「綺麗ね」だなんて。

________________母さんの、方が

「よっぽど綺麗なのに…」

母が白い亡骸になった翌週に私はこの病院に来た。
今でも思い出す。
あの美しい翡翠の様に鮮やかな、透き通った様な緑色の眼を。

っとと、思いがけず暗い気持ちになってしまった。
これから患者さんに接するというのに。かたじけない。
いや、かたじけないはご馳走さま的な言葉だったっけ？
そう思いながらぱちん、と頬を叩いて頭を起こす。
____ちょっと強く叩きすぎて痛かったけど____
うぅん…と伸びをしてから壁に掛けてあるもはやセーターにも見て取れる厚手のカーディガンに手を伸ばす。

申し訳程度のナースキャップも被りながら仮眠室のドアを開ける。

______________さて、本日もお仕事始めますか。

作者:うる〔よる。〕

担当:眞要