鬼さんこちら (ページ10)

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４.とりたくなかった確証(２) ページ10

俺は翠くん以上に慌て叫んだ。

「仙石くん…仙石くんはどこッスか！！」

いきなり取り乱した俺を、全く無駄の無い動きで深海さんが取り押さえる。

「てとら。おちついてください、『しんこきゅう』…♪」

「深海さんっ、落ち着いてる場合じゃないッス！気づいてないんスか？！」

深海さんに抵抗はできていないが、とにかく暴れる。翠くんは、嘘……と呟き瞳を揺らしている。

「仙石くん……なんで今まで忘れてたんだろ……？そんなはずないよ……なんで、なんで……」

深海さんは翠くんも自分のほうへ引き寄せ、俺たちに諭すように囁いた。

「あのこのことなら、きっとだいじょうぶ。しのぶは、たいせつな『なかま』です、たすけにいきましょう。いまごろ、『ひとりぼっち』でこわいおもいを、しているでしょうから」

そのときの彼は、さっきまでの傍観者の態度とは打って変わってキリリとした顔をしていた。

「さあ、『たいちょう』。みんなでしのぶをさがしにいきましょう。」

先程から一言も発しなかったリーダーの方に向き直る。

目の前に立つその人の様子は明らかにおかしかった。

「リ、リーダー？」

顔は確かにこちらを向いているのだが、いつも相手の両の目をしかと見つめている目線は空虚を漂い、うるさいほどの声が飛び出す口は薄く開き、大袈裟な身振りをする両腕は力なく下がっている。おまけに小刻みに震えており、具合でも悪いのではないかと思った。

蘇る、あの雨の日の記憶。

気づくと深海さんが自分たちを離れ、その人のもとにいた。

「ちあき、だいじょうぶです。おちついて『いき』をすって……はいて……。はい、もういちどすって……はいて〜……」

俺と翠くんは見ていることしかできなかったが、言われるがままに深呼吸していると、やっといつもの瞳の輝きが戻ってきた。一度瞼を閉じ、

「ふぅ……ありがとう奏汰。取り乱してすまんな。」

もう一度瞼を開く頃にはもう、ほぼいつもの調子だった。

「体調よくないんスか……？なら無理しないでくだ……」

「いや、大丈夫。ノープロブレムだ！」

翠くんの言葉を遮り叫ぶその人。

うるせえ。

「ただな、一つ思うところがある」

真剣な表情になったリーダーを見て息を呑む。

「仙石はこの校舎中探し回っても見つからないだろう」

「『人は"鬼"に拐われる』そうだ。この都市伝説によるとな」

「もう、俺たちは"鬼"から逃げれんぞ」