対面―�� ページ14
いつもより、彼の手に込められた力が強い。
痛みを感じたりするような強さではない。けれど、不思議とその力強い手に抱かれていると安心出来ます。
今まで周囲の人間から妹に比べて不出来な姉だと言われ続けていた私の事を、個人として扱ってくれる彼に思わず頬が緩んでしまいそうです。
「…ん？なあにAちゃん、また照れちゃった？」
「………それもある、けど…堂々と私の事を恋人だって言ってくれるの、ちょっと嬉しくて…」
「んもう何それ可愛過ぎ！無理！肩抱いてるだけじゃ我慢出来ない！もう全力でハグしちゃうもんね！」
…どうやら緩んでしまいそう、ではなくとっくに緩んでしまっていたようです。
彼にそれがバレてしまった上に、大勢が見ている中で思い切り抱き締められてしまいました。
周囲から「リア充カップル共め！」なんて揶揄うヤジが聞こえてきます。
「どれだけ羨んでもAちゃんは誰にも譲らないもんね！」なんていう及川君の声も。
ついでに、彼の心臓の音も。耳元でバクバクと激しく動いているのが、より鮮明に伝わってきます。
抱き締められているお陰で私の顔は周囲には見えていないとは思いますが、心音を聞いていると私だけではなく彼もドキドキしたりするんだ、なんて考えてまた一層顔が熱くなるのが分かってしまいます。
そんな時、
「……………すずはずっと、寂しかったのに…」
顔の火照りが一瞬で冷めやる程の低く暗い呟きが、私の鼓膜にガラスの破片のように突き刺さりました。
それは恐らく、ヤジが飛んでいるような騒がしい教室の中では大して響かない、誰かに届く事もないような小さな声だったのでしょう。
ですが、妙な事に私はその声に気が付いてしまいました。
恐る恐る、彼の腕の中から妹の姿を確認しようと顔を動かすと、私が顔をすずの方に向けた事に気付いたらしい及川君が、思い出したかのようにすずに声を掛けました。
「…あ、それで聞こうと思ってたんだけど。
なんで君Aちゃんのシャーペンを持っていこうとしたの？」
「そ、それは…」
ヤジが飛び交っていた教室が、及川君のその質問をキッカケに急に静けさを取り戻しました。
なんとか私が彼の腕の中から教室の様子を伺うと、私が彼の腕の中、視界を遮られていたうちに、どうやらすずはこの場から離れようとしていたようです。
教室の扉に引っ掛けられた彼女の手が見えました。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 362人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Guilty(プロフ) - モモさん» コメントありがとうございます、キャラの把握、そして溺愛っぷりはかなりこだわって書いてますのでそう言って貰えると嬉しいです☺ (2023年2月23日 13時) (
レス) id: 4d6b8818fd (このIDを非表示/違反報告)
モモ - 及川さんの溺愛っぷりがすごいです！キャラがちゃんとつかめていて、見ててすっごく面白です！！ (2023年2月23日 13時) (レス) @page44 id: 759a61aa3f (このIDを非表示/違反報告)
Guilty(プロフ) - あさん» 長らくお待たせしてしまいましたね😅文章の書き方はこだわっているつもりですのでそう言って頂けると嬉しいです、ありがとうございますo(_ _)o (2022年9月11日 19時) (レス) id: 7dfd57a894 (このIDを非表示/違反報告)
あ - ここここ更新されてる😭ずっと待ってたんですよ！！1話1話の文の書き方好きです (2022年9月11日 18時) (レス) @page29 id: a182ab6823 (このIDを非表示/違反報告)
Guilty(プロフ) - あさん» 毎晩覗きに…！？Σ(ﾟ∀ﾟﾉ)ﾉマジですかありがとうございます、そんなに期待されていたとは…毎日更新が出来ないのが申し訳ないです、必ず近いうちにまた更新させて頂きますm(__)m (2022年8月23日 2時) (レス) id: 7dfd57a894 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Guilty | 作成日時：2021年7月8日 14時
