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合流２ ページ13

「話を戻すけど、その澁澤龍彦が今この横浜(まち)でこの現象を起こしている。そうするように兄が仕向けたんだ」
それを信じたくないのか、私に向かって前のめりになる。
「このスピードの中でその姿勢は危ないよ」
「太宰さんは、如何してそんな奴をここに！？ 異能者が多くいる横浜じゃ……！！」
私の忠告も効かず、敦君は更に体勢をこちらに倒す様にする。
「横浜だからこそだよ」
敦君の動きが止まる。
「横浜、だからこそ……？」
私は後部座席に対して前のめりになっている敦君の姿勢を戻してやると続けた。
「マフィア時代のあの人は荒療治が過ぎるところがあった。前に云ったろう、マフィア時代の兄は部下が教育上手くなかったと。芥川君のあの空間断絶だって、芥川君を銃で撃って無理矢理成功させたぐらいだ」
口の端を引き攣らせる敦君の瞳には、どこか芥川君への憐憫の色があった。その目で芥川君を見たら足を持っていかれるか刺されるぞ。
「あの抗争で殺したはずの澁澤龍彦が存在している。であれば、異能無効化程度じゃ何も解決にならない」
ここまで云えば判るかな、と私は敦君に逆に問いかけた。
「だから僕達に、横浜の異能者に解決の糸口を見出した――そうですか、Aさん」
そう云う敦君にはもう脅えや焦燥の色はなかった。
「少なくとも、私はそうだと考えているよ」

濃霧を掻き分けるように、車は爆走する。いつの間にか中華街に突入していた。
「だとしてもこのまま異能が戻らない事には……そうだ、Aさんの異能は大丈夫なのですか？」
敦君は私を気にしてか、跳ねるように振り返った。
「心配ありがとう。でも大丈夫、もう私の異能は戻ってる」
それに敦君は驚愕の声を上げた。
「自分の異能に見覚えの無い何かが無かったかい？」
鏡花ちゃんは運転の手を止めること無く、
「夜叉の額に、赤い結晶が有った」
とだけ答えるとそのまま中華街をすり抜けて行った。
「それを破壊すれば、異能は戻る？」
速度を落とさずに曲がる為、度々タイヤが耳障りな悲鳴を上げた。
マ〇カかな、とぼんやり思う。それか頭〇字D。もしかしたら例の太宰さん推しの友人の運転テクならこの運転を再現出来るかもしれない。ゲーセンで見た彼女の頭文〇Dは凄かった。
「鏡花ちゃん、正解。あれを破壊すれば異能は戻るよ。まあ、戻ったところで私の異能は戦闘系じゃないし、この状況じゃなーんにも出来ないけどね」
と三半規管を蹂躙された私は、乾いた笑いを漏らすのだった。

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