第023話・佐久間との逢瀬 ページ25
壁山が待てども待てども帰ってこない。これでは試合が始められない。試合痺れを切らしたのか冬海が校舎から走ってきた。
「円堂くん! 円堂くん!」
「?」
「どうなってるんですか!」
「冬海先生…えっと、今壁山がトイレに」
冬海はチラリとあの人へ視線を向け、円堂たちに対しこれ以上帝国を待たせるなと言い、円堂たちが壁山を捜しに行くことになった。
「Aさんは捜しに行かないの?」
「あのねぇ秋…壁山は男子トイレにいるんだよ…」
「あ、そっか…!」
腕時計を見て唸る冬海を尻目に近くにあったサッカーボールでリフティングを私は始めた。
帝国サイドを見ると、寺門、辺見、鬼道が話しているのが見える。
「気長に待とう。急がば回れとも言うし」
「Aさんってやっぱりサッカー上手よね」
「ありがとう。君にそう言ってもらえると嬉しいよ」
「うん。とってもプレイが丁寧で確実だもの」
「それは余裕があるからだよ。私だって余裕がなくなれば、ラフなことしそうだし…。みんなが思っているほど、お綺麗な存在じゃないから……ねッ!!」
そう言って試合後半帝国サイドになる校門側のゴールにシュートを入れる。
私のシュートがゴールに文字通り突き刺さったのを見て、帝国イレブンが息を呑んだのが分かった。だが、冬海は――
「九重さん、何をしているんです! 帝国の選手に当たりでもしたら…!」
と帝国イレブンの心配しかしていないようだ。彼の心配事は、あの人の怒りを買って自分が潰されるのが怖いだけ。――知ったことか。
「知ったことか、私はアンタを一番信用していないんでね」
「なっ…!?」
私は自分で蹴っ飛ばしたボールを取りに帝国サイドへと足を進める。すると「ほら」と親切にもボールを渡してくれたのが佐久間だった。
うわぁあ…正直すごく…いや、かなり嬉しい。なんせ前世の帝国での推しが佐久間なのだ。めっちゃすこ…とんでもなくすこすぎる。
「パワーとスピードのあるシュート…女子でいるのがもったいないな」
「へぇ…。帝国の佐久間にそう言われるなんて…嬉しいよ」
「知っているのか」
「もちろん。貴方のことは、去年のフットボールフロンティアの中継で見ていたもの」
「へぇ…」
声が緊張で震えるかと思いながらも、余裕を見せながら彼との会話をする。――どうしよう心臓バクバクしている。
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活字不足卍(プロフ) - 書いてる (2022年6月9日 1時) (レス) id: 63abfde266 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - この話好き!pixivでも書いてますか? (2021年1月23日 8時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:活字不足卍 | 作成日時:2019年3月31日 1時