第019話・恩人 ページ21
「えっと……」
「立てるか?」
「あ、うん…」
彼は口数は少なくクールな人物だが、サッカーへの情熱はかなりのもだと公式でも言われている。そんな彼は不器用ながらも私を気遣い、手を差し伸べ立たせようとしてくれる。
私もそんな不器用に手を差し伸べる彼に答えようと、差し出された手を握り立ち上がろうとするが…
「いっ…!」
「! どうした…?」
「あ、いや…ちょっと……」
足元を見ると左足から血がダラダラと出ていた。どうやらさっき躓いた際に捻ったついでに、コンクリに擦りむいたようだ。
「血が出てるぞ…。痛むか?」
「ちょっとだけ…」
「…本当か?」
「うぅ……」
私より背が高いくせに屈んで私の足の様子を見て、質問するたびに上目遣いでこちらを見上げてくる。――くぅ…顔がいい。などと若干悶絶する。
その後、彼に抱えられ稲妻総合病院で治療をしてもらった。
「A!」
「A!!」
「おじいちゃん、おばあちゃん…!」
診察が終わり診察室から出ると祖父母が私に泣きついてきた。
「怪我したんですって?! 痛いわよね!」
「くそぉ、野郎ぜってー許さねぇぜ!」
祖父のべらんめぇが若干出ているのでMK5(マジでキレる5秒前)だ。
すると祖父母の背後から豪炎寺親子が顔をひょっこり出した。
「お孫さんの怪我はそこまで酷いものではありません。とはいえサッカーをしているのであれば一週間は安静にしていないといけませんよ」
「そうですか、ありがとうございます。先生」
「いいえ」
「トラックの運転手は?」
「警察の話では逃げたそうです。まだ捕まっていません」
大人の話は大人に任せよう。と思い私は豪炎寺の制服の裾を軽く引いた。
「?」
「ありがとう…。私、九重 Aっていうの、よろしくね」
「…ああ。俺は…――」
「豪炎寺 修也」
「! …知っているのか」
「知らないのは円堂くらいだよ。君のことは去年のフットボールフロンティアの中継で見てたから」
「……そうか」
彼にとって父親の前でフットボールフロンティアの話をされるのは地雷だろうに。ごめんね…気が利かなくて。けれどさすがに去年の決勝戦の話は持ち出さなかった私、偉い!
その後、豪炎寺親子に見送られて祖父母と共に帰宅した。
「帝国との試合…出れない?!」
次の日、朝から部室へ行くと風丸がいて助っ人することにしたと聞いた。
だが、私は一週間は安静のために練習試合に出れなくなってしまったのだ。
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活字不足卍(プロフ) - 書いてる (2022年6月9日 1時) (レス) id: 63abfde266 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - この話好き!pixivでも書いてますか? (2021年1月23日 8時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:活字不足卍 | 作成日時:2019年3月31日 1時