偽りの脱却 ページ25
さっきまでとは違う涙がとめどなく流れて来て、千冬の肩を濡らす。
「親友として、ずっと傍にいること選んだ」
「なんで…」
「どんな形でもAの近くにいたかったから」
「ずる、い…っ」
私の存在を噛みしめるように
何度も頭を撫でては、力強く抱きしめる。
「でも、もういい？」
「……ん？」
「もう、偽らなくていい？」
「偽らないとどうなるの？」
背中に回っていた腕が、私の両頬に添えられた。
「毎日、好きだよって言う」
「毎日…？」
「うん、で、毎日会いに行く」
「千冬…っ」
「毎日ぎゅーって抱きしめる」
優しく微笑む千冬につられて、私も泣き笑い。
もっと可愛い顔で見つめ合いたいけど
千冬のせいで、涙でびしょびしょだ。
「じゃあ、偽らなくていいよ」
「そのつもり」
どちらからともなく唇が合わさって
深い口づけに溺れる。
絡めとられた舌。
絡み合った指先。
気付けば、ソファに身体が沈んでる。
「まだすきって、お前の事ね」
「沙羅ちゃん知ってたの？」
「あぁ。当時言われたんだよ、Aちゃんが好きなんでしょって」
もしかして、千冬のフラれた理由って…、
「他の子を見てる人とは付き合えないってさ」
「……当たり前だよね」
「ハハッ、確かにな……けど、」
私の頭を抱え込み、おでこがコツンとぶつかった。
ぼやける視界で、千冬の表情はわからない。
だけど、その声はいつもよりも優しい。
「Aならいいかな、俺は」
「私が他の人を想ってても？」
「うん、きっとその瞬間だけの幸せに溺れる」
「……あぁ、わかるかも」
私もさっきまで、この片思いに終止符を打とうとしてたし。
ましてや、最後に抱かれたいなんて思ったもん。
後から迫る後悔なんて、考えもせず。
「私もきっと同じ…、その瞬間だけを選ぶかな」
「そんな選択肢ねぇから安心しろよ、嫌ってほど愛されてっから」
鼻同士をぐりぐりして悪戯に笑ってる。
千冬のその笑顔は、高校生の頃から変わらないな。
あはって笑う私の顔中に、チュッとキスの雨。
見つめ合って、微笑み合って、
最後に重なった唇。
「私も千冬と同じ事した」
「なあに？」
甘い声と共に、撫でられる髪が気持ちい。
「千冬を忘れようって他の、んっ」
「いいよ言わなくて…、今があるから」
人差し指を私の口に当て、フッて小さく笑う。
私を見下ろす雄の目に、
これからの事を想像して、ドキドキが止まらない。
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えりちゃん - はじめまして！千冬の小説の中でいちばん大好きです♡︎ʾʾ (6月5日 9時) (
レス) @page50 id: 84c92b84c7 (このIDを非表示/違反報告)
いぬ？ - ずっと泣いてました。涙腺しにました。千冬くんのこともっと好きになりました。 (2022年11月5日 12時) (レス) @page50 id: dc4cbab92b (このIDを非表示/違反報告)
華ノ子(プロフ) - 泣きました〜( ;ᯅ; )matsuriさんの作品本当に好きです… (2022年7月29日 2時) (レス) @page50 id: 71c3cf5627 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃみさん(プロフ) - 本当にいつもどの作品もmatsuriさまのは素晴らしいです。もう素敵すぎて逆にしんどいです笑 三ツ谷読みたいので、次作楽しみにしております！でもたまに灰谷兄弟の更新もお願いします笑 (2022年7月7日 13時) (レス) @page50 id: e87bae8502 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 初コメ失礼します ! matsuriさんの作品、とても大好きで毎日読んでいます。今回の作品も最高で更新されるたびわくわくしながら読んでいました。この度は完結おめでとうございます！次回作もあらすじ読んだだけでもうすっごく楽しみです！暑いので体調にはお気をつけて！ (2022年7月6日 1時) (レス) @page50 id: d402d271eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：matsuri
| 作成日時：2022年5月23日 18時
