「やってみな。私のお母さんも諦めたよ」 ページ48
「つかお前ら、Aの分の飯も調達して来い」
「あ、そっか!」
龍志がおもむろにそんなことを言いだし、みんながそういえばという顔をした。
別に特にお腹は空いていないのだが、龍志の言うことが本当であれば2週間近くご飯を食べていないことになる。
何かをお腹に収めておいた方がいいだろう、どう考えても。
「A、なんか食えないモンとかあるか?」
「うーんとねぇ…」
私は顎に手をあて、考えるように目を泳がせた。
そして頭の中に浮かんできた単語を片っ端から言う。
「魚と緑黄色野菜ほとんどとあと牛肉と豚肉はそこまでファンでもないかな、海鮮類はエビとか以外は無理…フルーツもそこまで食べれないし、梅干系もあんまり食べないから苦手と言えるかも…大体外見が怪しいものは食べれないし…」
「ちょっと待て」
うーん、と唸りながら呪文のように続けていると、呆れたような声が上から降ってきた。
龍志の方をみると、表情も呆れきっている。
あれ、なんかむなしくなってきたぞ。
「…むしろお前、食べれるものって何だよ…」
「えーっと、鶏肉が肉類の中で一番好物だよ。豚肉だと、ベーコン類は好きだな。野菜だとレタスキャベツブロッコリー胡瓜人参とかは食べれる。魚は、刺身だとか小さい焼き魚なら食べれる」
「…わかった。面倒くさいからお前の好物はなんだ」
「ラーメンかな。正直言うとお米もそこまで好きじゃないんだ。飽きた」
清々しい笑顔で言うと、龍志は頭を抱えて唸りだした。
そりゃあお母さんも音をあげるほどの激しい好き嫌いだよ。
「…と、とりあえず俺らはラーメンでも出前頼んでくるッス…」
「…あぁ頼む」
あれ、雄人君にも引かれちゃった。
うーん、でもこれくらいの好き嫌いって結構多いと思うんだ。
特に最近の子供は親に甘やかされるの多いからなぁ…なんていうんだっけ、モンスターペアレント?
考えているうちに、扉が静かに閉まって部屋にまた静寂が訪れた。
今じゃニュースは関係ないものを流していて、どうやらどこかの家屋が火事になったらしい。
時計がカチコチと音を響かせ、なんとなく自然に気まずさを覚えた。
「…お前のその偏食、絶対直させるからな」
「やってみな。私のお母さんも諦めたよ」
胸張ることじゃないと思うけど。
龍志は小さくため息をついて、ベッドサイドに置いてあるパイプ椅子に腰かけた。
その拍子に、パイプ椅子が悲鳴をあげる。
再び静寂が訪れた。
もともと静かな空間は好きだった。
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:
作成日時:2013年11月29日 22時