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どうか、気がつかないで ページ43

もう深夜だというのに、

この場は賑やかだ。

一次会で帰ったのは数人のみ。

集団の最後尾をトボトボ一人で歩く。



シオンは別の友達のところにいるが、

時折、心配そうに私の横に来る。

こういう彼女の優しいところが好きだ。



私はみんなと同じように騒ぐことはできない。

目立つのが嫌なだけだが、

私と正反対のシオンはこういう時騒ぐタイプ。



だから、



『私のことは気にしなくていいよ』



と促す。

ため息をつくと、少しだけお酒の匂いがした。

なんでだろう。視界がぼやけてきた。


何かが胃からせり上がってくる気がする。

本当に呑みすぎたみたいだ。



『ううっ』



クラスメイトはカラオケに行くのに頭がいっぱいで、私のことには気づいてない。


それでいい。

少しずつみんなとの距離が開いていく。



『と、トイレ』



どこか店でも、公園でもいい。

トイレに行きたい。


道の端にうずくまる。

とりあえず委員長に帰るって連絡しよう。


ケータイを取り出す。

高校時代にもらった委員長の電話番号を探し、

ボタンを押そうとした時だ。




『あっ』




自分の手の中が空っぽになる。

見上げる。

一瞬で逃げ出したくなった。



「どうしたの 」



友達に向けるのと同じ顔で、

同じ声のトーンで、聞いてきた。


おもむろにケータイの画面を見ると、

目を細めてなにやら不機嫌そうに呟く。



「ふーん……委員長に何か用?」

『いや、あのっ』



急いで立ち上がる。

その勢いでまた立ちくらみがした。



『なんでも、ない。

だから、お……先に行っていいよ』



危ない。

みんながおそ松、おそ松、名前で呼ぶから、

つられてしまうトコだった。



嫌われていることが頭をよぎり、

視界から早くいなくなる事を願う。



「吐きそうなんでしょ」
『は、』



私の答えを聞く前に歩き出す。


もしかしたら、

私を誰かと間違えているのではないか。




だって、


腕を掴む彼の手があまりにも優しすぎる。

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月夜の光(プロフ) - 林檎麻さん» 林檎麻様、更新が遅くなって本当に申し訳ありません! お気に召したらいいなと思っております> < (2016年9月20日 0時) (レス) id: d3821ecd4f (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - 月夜の光さん» うわあぁあぁ返信ありがとうございます!!!こちらこそ本当にありがとうございます!! (2016年8月18日 23時) (レス) id: 6ae5345221 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の光(プロフ) - 林檎麻さん» いつもありがとうございます!リクエストもとても嬉しいです!期待に沿えるよう頑張ります!! (2016年8月18日 20時) (レス) id: 882257e3d8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - カラ松とツンデレ妹夢主ちゃんの絡み合いが見たいです!!(笑)いつも怪我ばっかりしている次男の身体を見て、ちょっと心配する夢主ちゃん…みたいのです…分かりづらくてごめんなさい…!! (2016年8月17日 22時) (レス) id: 6ae5345221 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の光(プロフ) - 林檎麻さん» コメント本当にありがたいです!一松が一番好きなので、どうしても一松ばっかりになってしまいます笑笑 新作も見て頂きありがとうございます!そちらは全然更新出来てませんね…なのでそっちも頑張ります!いつもありがとうございます!! (2016年7月3日 9時) (レス) id: 882257e3d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月夜の光 | 作成日時:2016年3月17日 0時

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