どうか、気がつかないで ページ42
「んじゃ、改めてカンパーイ! 」
おそらくこの場にいる人の中で、
唯一私だけが、
彼が来たことに不満を抱いているだろう。
嫌われているとわかっているのに、
楽しくなんて呑めるはずもない。
話しかけられることなんてない。
それは分かってる。
でも、彼が同じ空間にいるだけで、
私の視界に彼が入るたび、
言われた訳じゃないのに、
嫌いだ、と言われてる気がして息苦しい。
しかし、始まったばかりで帰りたいとも言えず、
言葉を飲み込むように、お酒を口に含んだ。
常に彼の周りには人で溢れてた。今もそう。
先輩に後輩、同級生に先生。
誰とでも仲良くなる性格なのか、
クラスのほとんどの人が、
"おそ松 "と呼び捨てにしていたのを覚えている。
が、私にはそんなの関係ない。
彼の視界に、
私など入るわけがないのだから。
「よっ、A」
ある程度呑み、酔いが回ってきた。
頬づえをつき、一人で喧騒の中ぼーっとしていると、
肩を弾くように叩かれる。
『委員長……』
慣れた呼び名で呼ぶと、
彼は空席だった私の隣に座る。
委員長は困ったように笑うと、
片手に持っていた水を私に差し出した。
「もう委員長じゃないって。
顔赤いよ、大丈夫? 」
(相変わらず観察力凄いなぁ……)
高校生の頃から彼はよく人を見ていた。
彼は話が特に面白いわけでも、
特別可愛いわけでもない私にも、
普通に接してくれた。
私があだ名で呼んでいるのなんて、委員長くらい。
私を名前で呼んでくれる男子も彼くらい。
『そんなに、赤いかな……』
「赤いよ」
『委員長は、相変わらず優しいねぇ』
本当に酔っ払ってきたかも。気が抜けてきた。
頭が、回らない。
「二次会カラオケだけど大丈夫? いける? 」
心配そうに覗き込まれ、
顔色を伺うように前髪をかきあげられる。
こういうのをナチュラルに出来ちゃうのが羨ましいよ。
委員長に心配されるのは二度目だ。
松野おそ松の嫌い宣言を聞いてしまった私。
あの時、委員長だけは庇ってくれた。
「そういうこと、言うもんじゃないよ。
女の子に対してなら、なおさら」
衝撃発言を聞いて動けない私を、
教室にいた人に気づかれないように、
外に連れ出してくれたのも委員長。
「気にすんな」
心配そうに覗き込んでくれた。
もう迷惑かけるわけにいかない。
『大丈夫、行けるよ』
そう言って水を飲み干し、立ち上がった。
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月夜の光(プロフ) - 林檎麻さん» 林檎麻様、更新が遅くなって本当に申し訳ありません! お気に召したらいいなと思っております> < (2016年9月20日 0時) (レス) id: d3821ecd4f (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - 月夜の光さん» うわあぁあぁ返信ありがとうございます!!!こちらこそ本当にありがとうございます!! (2016年8月18日 23時) (レス) id: 6ae5345221 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の光(プロフ) - 林檎麻さん» いつもありがとうございます!リクエストもとても嬉しいです!期待に沿えるよう頑張ります!! (2016年8月18日 20時) (レス) id: 882257e3d8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - カラ松とツンデレ妹夢主ちゃんの絡み合いが見たいです!!(笑)いつも怪我ばっかりしている次男の身体を見て、ちょっと心配する夢主ちゃん…みたいのです…分かりづらくてごめんなさい…!! (2016年8月17日 22時) (レス) id: 6ae5345221 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の光(プロフ) - 林檎麻さん» コメント本当にありがたいです!一松が一番好きなので、どうしても一松ばっかりになってしまいます笑笑 新作も見て頂きありがとうございます!そちらは全然更新出来てませんね…なのでそっちも頑張ります!いつもありがとうございます!! (2016年7月3日 9時) (レス) id: 882257e3d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2016年3月17日 0時