1 - 6 選ばれし王の器 ページ6
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下から上えと疑いの目で見てみる。
無造作に跳ねた真っ黒な髪に、後ろには大きな三つ編み。
渦を巻いた模様の目はどこか違和感を感じたけど、赤と黒と金色の刺繍が入った豪華な服装を、当たり前のようにジュダルは着ていた。
その前に人の一人言を勝手に聞いて答えるなんて、なんなのこいつ。
ジュダルは僕を射貫くような無機質の目で返し、首を横に振った。
「俺はマギ。世界に三人しかいない、王を導く創世の魔法使い」
「ま、マギ? ……じゃあ魔法使えるの?」
こくん と機械的に頷く。
「お前の兄上もいい王の器だ。でも、俺が求める器にはちょっと当てはまらないかな」
「……祐兄が、王の器……? 」
それって、炎兄見たいに金属器って物を扱える資格があるって事?
思い出すのは、戦争でやり合った時よりも傷だらけで、部隊の半分以上減らし帰って来た炎兄の痛々しい姿。
肩から服が引き裂かれ、そこから覗く腕は折れていたせいで赤黒く腫れていた。身体中あちこち血が滲み出ていた炎兄だったけど、自分の事より亡くしてしまった兵の事を思いやってたっけ……。
………でも、祐兄もあんな風になってしまったら?
もし、迷宮の中で死んでしまったら? 僕は本当の一人ぼっちになってしまう。血の繋がった兄弟は祐兄しかいないし、僕にとっての光はあの人だけだから。
「で、でも何で僕の兄上なの? 王の器なんて他にもいるでしょ!」
「うん、ここは王の器がいっぱいだよ。俺を楽しませてくれる人が沢山……勿論、紅覇も」
「! 何で名前を……」
ジュダルは目を細め、笑った。
「知ってるさ、お前の事も紅祐の事も。俺と話をしてくれるんだ、だから好き」
「はあ!? 聞いてないよそんな話ぃ!」
「だってないしょだって約束したもん」
なんだろう。楽しそうに兄上の事を話す目の前の人物に対して、こんなにも ムカムカ するなんて。
自分が知らない所で こいつ と仲良くしてたなんて……
「……ズルい」
「うん?」
「僕の兄上なのに、僕よりジュダルの方が兄上とお話して遊べるなんてさあ……!!」
「……紅覇?」
「………ズルいよ……っ」
視界が歪んでいく。溢れてくるそれを必死に両手で拭おうとするけど、心は素直なんだと思った。
ジュダルに弱い所を見せたくないのに、止まらないんだ。
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初火(プロフ) - ラウさん» ありがとうございます! 次の更新は早めに出来るよう努力します!(。・ω・。)ゞ (2015年7月30日 20時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ラウ(プロフ) - イラストかわいてです!更新頑張って下さい(*´∀`) (2015年7月20日 23時) (レス) id: 0b7fa14454 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆみさん» ありがとうございます! 実は紅覇君の実の兄という設定はあまり見かけなかったので、だったら自分がなんとかそれを活用し、面白い話を作れたらなと思って書いてました。長文失礼しました! (2015年6月30日 20時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - 舞舞さん» ありがとうございます! 私の書き方が少しでも参考になれるのなら、嬉しい限りです。 ぜひ舞舞さんが書いている作品を読んでみたいです! (2015年6月30日 20時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ウルさん» 初めまして! ありがとうございます。時折イラストも載せる予定なので楽しみに待っていただけると嬉しいです! (2015年6月30日 20時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
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