陸 ページ6
*
天狗の面の男は、鱗滝左近次と云った。
元は鬼殺隊と云う鬼狩りの組織で柱を務めていたが、今は後継を育てる“育手”として鬼殺隊に貢献しているらしい。
鬼は人に害為す生き物だから、鬼殺隊に成れば人を救う事が出来るのだそう。
転生しても、私は友人であった織田作……織田作之助の想いは繋げたい。
“人を救う側になれ”
“どちらも同じなら、佳い人間になれ。弱者を救い、孤児を守れ。正義も悪も、どちらもお前には大差ないだろうが……そのほうが、幾分かは素敵だ”
織田作、私には未だ判らない。
何故そう思うのか。
けれど、私は信じている。
だって、私の友人が、織田作が云った言葉だから……。
* * *
鱗滝さんの修行は、私にとっては或る意味首吊りよりも苦しかった。
基礎体力向上から、素振り。
全集中の呼吸とやらの習得。
私はこう云った努力が嫌いだ。
けれど、私は大抵の事は苦労せず身に付けてしまう性質だからか、より沢山課題を積まれる。
あー、しんど。
うん、入水しよ。そうしよ。
水、冷た過ぎない?
川の水面にぷかぷか浮いていたら、力強く、と云うか強引に引き上げられてしまった。
誰だ、と思えば、右頬に大きな傷痕の在る宍色髪君だった。
彼は、私が鱗滝さんの弟子に成る前から此処で住み、自ら修行に打ち込んでいた、努力家だ。
因みに私より一つ上、つまり実弥さんと同い年という訳である。
「助かったか…………ちぇっ」
今回はぎりぎり意識が在った。
うん、其れは其れで苦しかった。
「A、川に落ちたのか?」
「……錆兎君、私の入水の邪魔をしないで呉れ給えよ」
「入水?」
「知らんかね、入水。つまり自害だよ」
「……は?」
「私は自害しようとしていたのだ。それを君が余計な事を___」
意識が飛びそうな程の強い衝撃。
気が付けば、彼に胸倉を掴まれていた。
「何故命を大切にしない!? お前とは違い、生きたくても生きられない者がいるんだぞ!!」
真っ赤な顔で、怒気を放つ彼。
「そうだねぇ、うん。全くその通りだよ。君はきっと、私より正しい。
でもね、錆兎君。
理想や正しさを貫いて傷付くのは、周囲の弱い人間なんだ。
正しさを求める言葉は刃物だ。それは弱者を傷つけこそすれ、守り救済する事は出来ない。
君が正しさを求める限り、何時か君にも刃物が宿るだろう。
覚えておくと善い。」
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サブとバラ(プロフ) - 戯言さん» コメントありがとうございます!本当にお待たせいたしました。毎日とはいきませんが、更新停止にならないよう、少しずつ連載していきますので、どうかこれからも応援よろしくお願いします! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 4ca3bc2d2a (このIDを非表示/違反報告)
戯言(プロフ) - 待ってました!!更新ありがとうございます!!! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 2a27d057e9 (このIDを非表示/違反報告)
サブとバラ(プロフ) - Kuro4141さん» ありがとうございます!皆さんをお待たせしたくせして受験落ちるわけにはいきません……!イイとこ受かってお祝いの更新します! (2020年10月17日 22時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
Kuro4141(プロフ) - 気長にお待ちしております!受験頑張って下さい! (2020年10月17日 19時) (レス) id: 8db3a541f6 (このIDを非表示/違反報告)
常田(プロフ) - リヴさん» またまたリヴ様!! こうしてコメントを下さるのは何度目のことか……!! 嬉しい限りでございます!!!!! ありがとう!! (2020年4月26日 12時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サブとバラ x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時