鬼は他者の裡にも鬼を見る【鬼滅】【文スト】

拾壱 ページ11

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え？
あ、有難うございます……？
？？

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　前世の私は、異能力者だった。

　其の名も、“斜陽(しゃよう)”。

　双子の兄であった治とは違い、超万能的なコピー能力で、使用者の名前と能力名、其れから効果を理解していれば其の能力をコピーする事か出来た。勿論、制限は在るのだけど。
　よく使っていたのは、与謝野さんの“君死給勿(きみしにたまふことなかれ)”と中也の“汚れつちまつた悲しみに”。この二つは扱い易いし使わなければならない場面が多く在ったからだ。

　今世では、異能を発揮出来ないと考えていたし、実際今までに使えた事は無かった。

　しかし、此の前の任務で、驚くべき事が発覚した。




　異能力が、使えるのではないか？




　対峙したのは、血鬼術を使う鬼だった。

　其れは善い。よく有ること事だ。
　問題は、虚の呼吸を使った時だった。

　何時もの様に、鬼の血鬼術から身を守ろうとして壱ノ型“人間失格”を使った時、来たる衝撃は、私に触れた刹那、消滅したのだ。
　まるで治の異能力……人間失格の様に。

　只、事は其の一度きりのみで。

　まだ異能が使えるか如何かは判らない。
　条件やら何やらが在るとしても、圧倒的に情報が少な過ぎるのだ。


　でも、若し使えるとしても、君達が居ないんじゃ使う意味が無い気がするよ。




* * *





「おや、義勇君じゃないか」

「……A」


　自身の担当区域を警備していた時、偶然任務帰りの義勇君に出逢った。
　暫く見ないうちに、すっかり雰囲気が変わっていた。

　成長した、という面ではなく、一切合切笑わなくなった、という面で。


「何かお困りの様だね」

「……」


　声を掛ければ、巡回を無言で付いてくる。

　此れは変わらない。
　鬼殺隊に入る前から、何か悩み事が在ると私の傍に居たがる。無理に探究しないからだろうか。
　口下手な義勇君だが、私から何も言わない時には自ら話す。

　今回の内容はこうだった。

　自分の所為で幸せに成る筈だった者が死んでいく。何故自分ではなかったのか。自分が死ねば善かった。自分の生きている意味が判らない。


「私もね、自分の生きる意味なんて判らない。ずっとそうだよ。まァ、其れは追々見つければ善いさ。
　しかしね、此れだけは覚えて呉れ給え。

　自分を憐れむな。
　自分を憐れめば、人生は終わり無き悪夢だよ」


＊

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