拾 ページ10
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「やぁ、しのぶちゃん。君は姐さんと違って蝶の様な儚さが在るね。とても可愛らしいよ! そうだ、こんなに可愛らしい君は私と心中……」
「Aさん、ちょっと黙って」
「つれない……」
今日も今日とて、蝶屋敷に参る。
なんたって私好みの美女がこんなにも沢山居るのだから!!
誰か私と心中しておくれ!!!!
「あら、Aじゃない。任務がないならゆっくりしていってね」
「姉さん!」
「ふふ、二人は仲良しねぇ」
「違うから!!」
何時もこう云う会話が生まれる。
嗚呼、此処に来て良かった。楽しい。
任務が在っても無くても、此処に来れば心が自然と落ち着くのだ。
「では、お言葉に甘えて……」
「貴女、怪我していないじゃない」
「まぁまぁ、しのぶ。姉さんはしのぶの笑った顔が見たいな。……それじゃあ、A。包帯を取り替えてあげるね」
「有難う、カナエさん」
「あら、姐さんでいいわ」
此処に来る度、有難い事に、首や腕に巻いてある包帯を交換してもらうのだ。
姐さんだけでなく、しのぶちゃんもやって呉れる。偶にだけれど。
「もう、女の子なんだから肌は大事にしないと駄目よ? しのぶ、私は患者さん診てくるから、任せたわよ」
「はい、姉さん」
「忙しいのに悪ねぇ」
姐さんは私を個室へと案内して呉れた後、そう言い残して行った。
今日はしのぶちゃんが包帯を交換して呉れるみたいだ。
慣れた手つきでするすると包帯を取るしのぶちゃん。
「Aさん、何で姉さんのことを“姐さん”って呼ぶの? 私より歳が近いのに」
「そうだねぇ……。彼女は何だか、昔私が姐さんと呼んでいた女性に似ている処があるから、かな。……彼女には誰かと重ねるってとても失礼な事なのだけれど」
そう答えると、包帯を取る手を止めた。
「今、その人はどうしてるの?」
「……さァ。もう会えないからね」
「…………」
彼女は少し悲しそうな表情をした。
それからまた、包帯の交換を再開した。
「酷い傷痕……」
「お見苦しくて申し訳ない」
首も腕も、古い包帯を取り終えた時、彼女はそう呟いた。
私も鏡で見る時、同じ事を思う。
刹那、彼女はぽろぽろと涙を零した。
それから、ゆっくり私の腕を撫でる。
「ごめ、なさい。私……」
嗚咽を漏らし、しゃくり上げながらも謝罪する彼女。
「謝らなくて善い。……有難う、しのぶ」
私は彼女の頭に掌を乗せ、しのぶの髪を撫でた。
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サブとバラ(プロフ) - 戯言さん» コメントありがとうございます!本当にお待たせいたしました。毎日とはいきませんが、更新停止にならないよう、少しずつ連載していきますので、どうかこれからも応援よろしくお願いします! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 4ca3bc2d2a (このIDを非表示/違反報告)
戯言(プロフ) - 待ってました!!更新ありがとうございます!!! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 2a27d057e9 (このIDを非表示/違反報告)
サブとバラ(プロフ) - Kuro4141さん» ありがとうございます!皆さんをお待たせしたくせして受験落ちるわけにはいきません……!イイとこ受かってお祝いの更新します! (2020年10月17日 22時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
Kuro4141(プロフ) - 気長にお待ちしております!受験頑張って下さい! (2020年10月17日 19時) (レス) id: 8db3a541f6 (このIDを非表示/違反報告)
常田(プロフ) - リヴさん» またまたリヴ様!! こうしてコメントを下さるのは何度目のことか……!! 嬉しい限りでございます!!!!! ありがとう!! (2020年4月26日 12時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サブとバラ x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時