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その日の夜

昼間知り合った商店街の夫婦が経営している居酒屋で、スタッフ達も含めて飲み会が行われた

俺の隣に北山

俺達の周りをスタッフ達が囲むように座る





「では、今回の企画とアルバムの成功を願って、かんぱーいっ!!!」





スタッフの掛け声で皆が一斉にビールを飲み干す

隣の北山も勧められるままに笑顔でビールを飲み、料理に箸を伸ばしている





「北山、明日も収録あるんだから程々にしとけよ?」

「ん、分かってる。」





スタッフ達も明日のスケジュールを分かってるから、そこまでは進めてはこないだろうけど、北山は空気を大切にするやつだから…





運ばれて来る料理に箸を付けながら、北山の様子をちらちらと見ていたら、北山の隣に座るスタッフが嬉しそうにスマホを弄り始めた





「見て下さいよ。俺、先月子供が生まれて…」

「え、そうなんっすか!おめでとうございますっ。」





北山の声に思わず振り返ると、ぐっと俺達の方へスマホを差し出すスタッフ

そこにはスタッフと奥さんに挟まれてニコリと笑う赤ちゃんの写真





「うわぁ、可愛いですねぇ!な、北山。」





じっと画面を見つめる北山に話しかけると、その横顔は泣きそうで…





「…北山?」

「あ…うん、そうだな。めちゃくちゃ可愛い。」

「…」

「んふふ、お父さん似っすねぇ!」

「そう思います?へへへ。」





幸せそうに笑うスタッフに頷く笑顔はいつも通り

あれ…気のせいだったか…?





「そう言えば、藤ヶ谷さん、保父さんになりたかったんですよね?」

「そうなんですよ。俺、ホント子供好きで…」





北山の様子が気になって黙り込んでた俺に気を使ったのか、スタッフが話しかけてきた

場を壊す事のないようにとそれに答えていたら、俺達の間で今度は北山が黙りこむ

話が他に逸れた隙を見て、俯いた北山の横顔を覗き込んだら、頬につーっと光るものが見えた





「え…、ちょ…北山?!」

「…」

「どうした?」

「……なんでもない…。」





スタッフはこちらには気にも留めず騒いでる

気付かれない様にそっと北山の頬に手を伸ばすと、指が頬に触れた途端、北山が驚いたように体をビクンと反らした





「え…」

「…っ……わりぃ…」





テーブルの下で、フルフルと握り締めた拳が震えている





「……抜けようか。」





俺は思わずその拳に自分の手を重ねていた






.

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作者名:MISA | 作成日時:2017年12月7日 13時

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