画竜点睛*2(敬人said) ページ26
「………すまない、俺だ」
二人にそう告げてから端末を取り出す。
まさかAが何かやらかしたのか……。この数日間で胃がキリキリと悲鳴を上げている。されど仕事は仕事。社畜よろしく、痛む眉間を抑え、携帯電話を耳に当てた。
「もしも──」
『おや、声が疲弊してるね』
「なっ、英智……!」
画面越しから聞こえてきたまさかの声。
「無駄話なら切るぞ」
『酷いなぁ、まだ何も言ってないだろう』
「経験論だ」
『手厳しいね。僕の体調を心配してるだろうと思ってこうして近状報告してるんだけれど。あ、今のところ倒れる予定はないから安心して』
楽しそうな声音で紡がれる言葉に、もう一度深いため息を零す。こいつ……。ほんと、こういうところだ。
画面の向こうから小さくだが『会長大丈夫?ここ座って!』という姫宮の焦った声が聞こえてきた。おそらく、倒れる、という言葉に過剰反応したんだろう。何度目かのため息。
『……さて、世間話はこれくらいにして。そろそろ本題に移ろうか。このままだと本当に切られかねないからね』
先程までの柔らかな口調は維持されているが、その言葉から伝わる空気は百八十度異なる。やっと真剣な話に入るようで仕方なく口を噤む。
『そろそろ外なる神……もとい、女神様に恩恵を授かりたいと思っている頃なんだ。そこで、敬人には銀の鍵の役割を果たして欲しい。もちろん、あの手筈道理にね』
「……時期早々じゃないのか。あの手は最後の切り札として使うべきだ。無闇に実行すべきでは」
『残念ながら、今がそのときなんだよ。それにきちんと説明しただろう。これはあの子にもメリットがある。なにも捨て駒として使うわけじゃない』
「それでも賭けなことに変わりはないだろう」
『ふふ。やけにあの子に肩入れをしているんだね』
そういうわけではないが、と言葉を濁せば。英智は嬉しそうに笑った。
『じゃあ頼んだよ、敬人』
「あっおい、」
ツーツーツー、と音がしたきり、英智の声は聞こえなくなった。あいつ、返事を聞かずに切ったな。なんとも身勝手で人の都合を考えない幼馴染に恨み節を唱えてやりたい気持ちになる。いやもう唱えそう。
けれど、あいつは一度何か言ったらそれを本当に実行してしまうやつだというのは、長年の付き合いで理解していた。
「……全く、度し難い」
俺は手に持っている端末を操作して、Aに電話をかけた。
……休憩している暇などなさそうだ。
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koeno(プロフ) - めっちゃ面白かったです!!素敵なお話をありがとうございました!もし続編を書かれるのであればぜひパスワードを教えていただきたいですー!! (4月7日 0時) (レス) @page49 id: 3ec6efc790 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 続編みたいです! (4月2日 17時) (レス) @page49 id: 54e2cad7a6 (このIDを非表示/違反報告)
0nm3264922j626v(プロフ) - 続編めっちゃ読みたいです!是非!お願いします! (4月1日 20時) (レス) id: 203b2c7fc8 (このIDを非表示/違反報告)
ただのヲタク(プロフ) - 続編読みたいです!すごく楽しく読ませてもらいました! (3月30日 9時) (レス) @page49 id: 9a68619e2b (このIDを非表示/違反報告)
ダイ - もう、めちゃくちゃ面白かったです!受験勉強後回しにして(?)2日で読み終わりました!ぜひ!続編読ませて欲しいです! (2月26日 23時) (レス) @page49 id: aa1dedb486 (このIDを非表示/違反報告)
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