前兆*１ ページ24
「ん、なにこれ」
逆先先輩と会った翌日の朝。
昇降口で上履きに履き替えたとき、ロッカーからヒラリと一枚の封筒が床に落ちてきた。手紙だろうか？
《城崎 A様へ》
宛名の欄に俺の名前が書いてある。
「──っ！！」
ま、まままさかこれって……ラブレター？
そう考えると、顔にブワァと熱が集まってくる。
辺りに誰もいないことを確認し、それを鞄の中に急いで閉まってダッシュで昇降口を後にした。向かう場所は屋上。朝だから人はいないだろうし、あそこなら誰にも邪魔をされないはずだ。
時間は──大丈夫！遅めに登校してしまったけれど、手紙を読む時間は充分にある。
「もしかすると、俺にもいよいよ春が……！」
にやける顔を抑えて、屋上へ続く階段を早足で昇る。
「よいしょっ──と」
扉を勢いに任せて押し開けると、その向こうには透き通るような青空が広がっていた。
昨日と同じように近くのベンチに腰かけて、鞄の中から手紙を取り出す。
「誰がくれたんだろう？」
裏表を確認するが、差出人の名前は書かれていない。恥ずかしくて名前を書けなかったのかな。そう考えると微笑ましい。
一体どんな子が、どんな想いを込めて贈ってくれたのかを想像すると、いやでも心臓の鼓動が速くなる。
ふいに、穏やかな風がサァと屋上を吹き抜けた。なびく髪を手で押さえ、封筒が飛ばされないように強く握りしめる。しばらく目を瞑って気持ちを落ち着かせてから、手紙の封を慎重に破いていく。
あぁ、今日は人生の中で一番最高の日だ。こんなにも、幸せな気分になれるものが溢れているのだから。
優しく爽やかに吹く朝風。
体の中まで射通すかのような明るい日差し。
広く大きく澄みわたっている青空。
『あなたの命を狙っています』
俺を脅す脅迫文。
「さいっあくじゃあああー！」
──俺にとっての春は、まだまだ遠いようです。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1417人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yukki(プロフ) - 続けてくださって嬉しい限りです！これからも応援しながら作者様の作品を読ませていただきます！！ (2020年1月11日 23時) (
レス) id: c7ca82405e (このIDを非表示/違反報告)
すみぃ(プロフ) - 続けて下さってほんとに嬉しいです！！pixivあんまり詳しくなくて作者様の作品見れるか不安なんですけど勉強します！！これからも影ながら応援しております！頑張ってください！ (2020年1月11日 19時) (レス) id: f77c46eafb (このIDを非表示/違反報告)
「なる。」(プロフ) - 作者様の書き方がとても好きですし、凄く読みやすいと感じています。なので、占いツクールでの活動を続けるという決断をなされた事が、凄く嬉しいです。最後になりましたが、更新、楽しみにしながら気長に待ってます。 (2020年1月11日 12時) (レス) id: 61cc988ea5 (このIDを非表示/違反報告)
「なる。」(プロフ) - こんにちは。突然ですが、コメント失礼します。占いツクールでの作品の書き方ですが、台本書きでは無い他の作者様も大勢いますし、現に私も台本書きはしていません。書き方は作者様の自由なので、台本書きでも、台本書きじゃなくても、どちらでもいいと思います。私は、 (2020年1月11日 12時) (レス) id: 61cc988ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Tatutatu(プロフ) - この作品とても好きです！続ける決断をなさってくれてとても嬉しいです……！ (2020年1月11日 10時) (レス) id: b586c3b914 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
