体育館倉庫*3 ページ22
ドキマギしている俺を怪訝そうな顔で見つめてから、「あのね」とひなたは話す。
「まず、俺たちが怒っていた理由は」
「っ、そのことなんだけど!」
俺はその声を掻き消す勢いで立ち上がった。
二人がきょとんとしている今、この流れに乗って押し切るしかない!今までにないくらい喉が緊張で乾いて張り付いてくるけど、そんなもん気にしてられるか!
「俺、今日もまた知らない人から話しかけられたんだ!」
二人の眉間に皺が寄ったのが見えた。けど気にしたら負けだ。
「それで先輩からデートしようって誘われて……。でも一人で解決できたから!」
信号機トリオのときみたく無理やり連れてかれそうになるってこともなかった。そう、つまり、上出来だったんだ。
「だから二人に心配されなくても大丈夫!ほら、この通りピンピンしてるし!」
両手を広げて元気アピール。
そうだったんだ、じゃあ大丈夫だねー、なんて笑う二人の姿を想像しながら視線を彼らに向ければ。
「へぇ、そうだったんだ」
なぜか背筋が凍った。笑顔だけれど目が笑ってない。なんでだ。ひなたが首をゆっくり傾げながら言う。
「それで?」
それで、って?
「えっと、だから俺は一人でも大丈夫で」
「そんなわけないでしょ」
まだ最後まで言ってないのに!
俺の言葉を遮ったゆうたは、冷めた口調で続けた。
「Aくんは自覚が足りてないよ。そう思わない?アニキ」
「そうだね。これはさすがに無防備すぎると思うなぁ」
無防備?無防備って何が?
「Aくんはさ、本当に一人でなんとかできるって思うの?」
ひなたが一歩、前に出る。ヤな予感がして、じりと一歩後ろに下がった。
「昨日、もし俺たちが助けに入らなかったら……もっと酷い目に遭ってたかもしれないのにね」
今度はゆうたが一歩、詰め寄ってきた。俺はまた、そのぶん後ずさる。
「そんなの、わからないだろ」
「そうだね、わかんない。でもなかったとも良い切れないでしょ」
また一歩、近づいてくる。逃げようと足を引くと、背中が壁にぶつかった。
っち。行き止まりか。どうする。俺の第六感がこのままじゃマズいと告げている。逃げる方法はないのかと、きょろきょろ辺を見回せば。
「ね、Aくん」
「ひっ」
耳元で囁かれた。驚いて振り返ると、すぐ目の前によく似た顔が二つ。
慌てて離れようとしたけれど、俺の動きを見越したように、ひなたとゆうたは俺の顔の横に手をついて囲ってきた。あ、これ漫画で読んだことある。あれだよ、あれ。ほら、壁ドンってやつ。
見てる分にはドキドキするけど実際されると別の意味でドキドキしてくる。俺、しばかれるんかな……。
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苺バニラ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます!そう言って頂けると、嬉しい限りです!更新が遅めになっていて申し訳ない気持ちで一杯ですが、これからも頑張ります! (2019年8月20日 14時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りな - 凄く良かったです!!面白かったです!!更新無理をせず頑張ってください!応援します!! (2019年8月20日 10時) (レス) id: 55c1958e88 (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - りさこさん» ありがとうございます(*´ω`*)とっても嬉しいですし、励みになりました!りさこさんは優しい方ですね!今後も頑張ります!! (2019年7月29日 7時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りさこ(プロフ) - 更新お疲れ様です!とにかく最高でした!!これからも応援してます!! (2019年7月29日 0時) (レス) id: c7281289de (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - 夜桜ナイフさん» ありがとうございます!時間が空き次第でよければ、拝見させてもらいますね! (2019年7月14日 16時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
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