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七十二言目 ページ27

彼は優しく微笑んで両手を私の首に添えた。

「手前はこうやって俺の手を首に持っていったんだ。殺意じゃなくて愛で殺せって何度も接吻した後になァ」

少しずつ手に力が入っていく。
菊池さんが止めようと叫んでいるけどそれも知らぬ間に止まった。

「俺の手で死ぬのは二回目だな、A」

苦しい。重力かけてるんじゃないの?ってくらい。
でもこれが中也からの愛なら…、あぁ、中也、全部思い出した。
上手く出ない声で彼の名前を呼ぶ。
すると先刻より嬉しそうに笑ってそのまま接吻を落としてきた。
首を絞めていた手は後頭部と腰を固定している。
でも止まらない接吻のせいで上手く息が吸えない。
本当に死にそう…。
身体に力が入らなくなり完全に彼に全てを預ける様になった頃、やっと止めてくれた。

中也「苦しいだろ。手前が悪いんだからな。あんなのお互いおかしくなるって分かってンだろ」

彼の身体に寄り掛かって息を整える。
好きな子の首絞めて興奮する人って世界にどれくらいいるんだろう。
なんてふと思った。
中也がそういう人で良かった。
それだけは言える。

菊池「思い出したからって何です?また異能で忘れさせればいいだけの事ですよ。上西さんから離れて下さい」

貴方「菊池さん、いい加減にして下さい。何があっても私があなたを好きになる事はないんですから」

菊池「諦めろって言うんですか!幹部より僕の方が上西さんの事好きな筈です!」

中也「なら死ぬ覚悟があるッて事だな?」

隣でふっと笑った。
菊池さん、本当にその辺で止めないと殺されるよ。
この人本気で殺すからね。

菊池「幹部は上西さんの為に死ねるって言うんですか」

中也「此奴殺してから自分も死ぬんだよ、馬鹿。先に死ねる訳ねェだろ」

そうであって欲しいとは思ってたけど、真逆彼本人の口からそれが聞けると思ってなかった。
中也は本当に何時か私を殺してくれる。
あの偏り過ぎた愛で。

菊池「本当に死ねるって言うんですか!」

中也「あァ。Aが望むなら出来る事はするッて決めたンだ。手前には無理だろ」

菊池「で、出来ますよ!」

中也「いや、無理だな。この首に手掛けれねェって事は無理って事だ」

本当にそう。
中也は迷わず首に手を回してくれた。
愛と死は同じものだと思う。

中也「菊池、来い。手前のこれからを決めてやる」

それだけ言うと中也は私を抱きかかえて外に出た。
外には広津さんが車を停めて待っていた。
会話もないままその車に揺られた。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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鶴媛(プロフ) - 紅野さん» わぁ!ありがとうございます!!お忙しいのに私の勘違いですみません!更新嬉しかったです、暑い日が続きますがどうかお体に気をつけてお過ごし下さい。 (2020年8月18日 1時) (レス) id: dda77e3f70 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます。いえいえ!忙しくて更新が止まってしまっただけです!また空いてる時間で更新するのでご安心を…! (2020年8月18日 0時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - え、八十五話で終わりなんですか?かなり気になるところで終わってしまって少し残念に思います (2020年8月17日 4時) (レス) id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 橘明音さん» ありがとうございます。そう思ってもらえて良かったです。ゆっくりですが頑張りますね。 (2020年3月2日 11時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
橘明音(プロフ) - 最後のコメントありがとうございます。 私は受験終わったけど学校なくて本当に暇だったのでそう言って書いてくださること、本当に嬉しいです!更新楽しみにしてます。頑張ってください! (2020年3月1日 23時) (レス) id: 0fca2029db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2019年2月6日 15時

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