【文スト】帽子幹部は私にだけ口数が少なかった筈なのに…【中原中也】

六十五言目 ページ20

あれから数日が経ってそこそこに瑞希さんの嫌がらせを受けながら何ともない毎日を過ごしていた。

現場の指揮を手伝ったり、自分の情報管理の仕事をしてみたり。
やっぱり幹部は忙しいらしく、暇もなく紙やパソコンとにらめっこをしているか、外で任務をしているかだ。
別に全部について行くわけじゃないから私の方が時間はある。
幹部は情報管理の仕事からは程遠い忙しさだ。


今は中也がマフィアの傘下である小さな会社に何かしらの用で瑞希さんと行っている。
私は置いてかれた。二人も雑用は要らないからお前は自分の仕事何かしてろ、と。
だから情報管理室に『上西おります』という看板を下げ、掃除をしたり足りない資料がないか確認したりする。
後任の情報管理担当は週に一、二回しか来ない。
他の日は私が仲介に入る。
まぁ来るのは一、二回でも情報取る仕事は結構してくれてるみたいだから何も問題ない。

コンコンとノック音が聞こえた。
まだそこまで日が経っていないのに懐かしく感じる。
返事をすると数人の下級構成員らしき人たちが入ってきた。

「幹部補佐の上西さんですね」

貴方「ええ、そうですけど」

「これを中原幹部にお渡し頂きたく参りました」

ファイルに入った紙の束を出してはっきりと言った。
中也の部下か。

貴方「そういう事ね。わかりました。受け取っておきます」

紙の束を受け取るとしっかりと腰を折って礼をして部屋を出て行った。
あれはあの人の性格なんだろうな。
そう思いながら手元の受け取ったものに目を通す。
数日前に行った任務のものらしい。
私は一番後ろで見てただけだからここ迄の報告書を作らなくていい。それはちょっと楽。

受け取ったファイルを机の上に置いてやりかけだった掃除に手をかけた。
棚の埃を落としたり、掃除機をかけたりしている内に時間は過ぎていった。

お昼何処かで食べようかな。
そう思っていた頃、突然扉の開く音がした。

「上西さん、どうも」

そこに居たのは菊池さんだった。
またか。そう思った。

貴方「どうしたんです？」

菊池「いえ、一緒にお昼、どうかと思いまして。今日幹部は外に行っていると聞きましたから」

貴方「まぁそうですけど」

菊池「断ってもらっても構いませんよ。でもその時は」

急に至近距離にやってきた菊池さん。
真後ろにいる彼の方に振り向いた時に目が合った。
言葉を発する前に崩れ落ちた。
突然の睡魔。あぁ、やられた。
警戒心が足りないな…。

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