五十言目 ページ5
足音。
そっと目を開くと何時もの廊下が見えた。
首を動かすと一定のリズムで揺れる少し長い髪が見える。
貴方「……中也？」
止まる足音。
此方を見る綺麗な双眼。
中也「……大丈夫か」
ぼーっとする頭。
何がどうなっているのか考える事すら面倒になる程全てが重たい。
どうにか掴んた彼の服。
また目を瞑ると彼の声が聞こえた。
中也「一応医務室連れてくから」
また響く足音。
彼の匂い。
暗闇に落ちていく。
言い合う声が聞こえる。
二人。いや、三人。
目を開けて声の方を見ると首領と中也と姐さんがいた。
体を起こすと寝台がギシッと音を立てた。
それに気づいて静まり、此方を見る三人。
最初に口を開いたのは中也だった。
中也「まだ起きるンじゃねェよ。寝てろ」
貴方「何ともないよ」
中也「俺は何ともなくねェンだよ」
貴方「どういう事…？」
優しい声と共にまた寝かされた。
ただ少しぼーっとするくらいで何ともないのに。
森「何ともないならそれでいいじゃないか」
紅葉「何を言う！問題は今ではなかろう！」
中也「首領、お言葉ですが、あれはかなりのものでした。そんなのが続くのは良くないかと」
明るく言った首領に畳み掛けるように二人が反論する。
先刻優しかった中也の声は静かな重いものに変わっていた。
紅葉「二度三度となればこんなものではないかもしれぬ」
森「それはその時考えれば良い」
中也「そうなった時じゃ遅くはありませんか」
森「なら、彼女本人の意見を聞いてみようか」
そう言って首領は私の傍に立った。
私の話をしてたの…？
森「辛い所はあるかい？」
貴方「いえ、少し頭がぼーっとします。それ以外は何ともないかと」
森「なら良かった。君は今日みたいなのが続くとしたらどうだい？」
貴方「あの部屋に……？」
森「そうだよ。正直に言って見給え」
貴方「……それは酷な事です。今日だって色んな事を考えました。でもそれをどうにか押し込めて記憶の中の彼に縋ったんです。あの人ならあの場を上手く切り抜けられるから。なのに思い描く事すらも叫びたくなるくらい怖かった。あの時私の中には私とあの人とが共存してました。いや、支配されてたと言った方が近いかもしれません。……一瞬自分がわからなくなったんです」
そこから先は上手く言葉が出なかった。
わかった、とだけ残して首領は姐さんを連れて去って行った。
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鶴媛(プロフ) - 紅野さん» わぁ！ありがとうございます！！お忙しいのに私の勘違いですみません！更新嬉しかったです、暑い日が続きますがどうかお体に気をつけてお過ごし下さい。 (2020年8月18日 1時) (
レス) id: dda77e3f70 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます。いえいえ！忙しくて更新が止まってしまっただけです！また空いてる時間で更新するのでご安心を…！ (2020年8月18日 0時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - え、八十五話で終わりなんですか？かなり気になるところで終わってしまって少し残念に思います (2020年8月17日 4時) (レス) id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 橘明音さん» ありがとうございます。そう思ってもらえて良かったです。ゆっくりですが頑張りますね。 (2020年3月2日 11時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
橘明音(プロフ) - 最後のコメントありがとうございます。 私は受験終わったけど学校なくて本当に暇だったのでそう言って書いてくださること、本当に嬉しいです！更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2020年3月1日 23時) (レス) id: 0fca2029db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅野 | 作成日時：2019年2月6日 15時
