118◆とある信者と相棒の受難◆ ページ25
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――結局のところ、その日Aが自室から出てくることはなかった。
ただ、夕食はきっちり用意されていたことに関しては、おかしな部分で真面目というか、意地っ張りな彼女らしくもある。
余談だが、食堂に戻ってきた時にはいつの間にか跡片付けと明日の仕込みまで済ませてあって、その素早さと何が何でも姿を見せない鋼鉄の意思には彼女の兄すらいっそ呆れ返る程であった。
ところかわって、秀徳高校バスケ部の宿泊部屋。
「真ちゃーん、もう諦めろよ。さすがにこのラッキーアイテムは無理だって」
「俺の辞書に諦めるの文字は無いのだよ。どんなラッキーアイテムも必ず手に入れる、それが人事を尽くすということだ…‼」
「ナポレオンか!?こんなところで無駄に我儘権使ってんじゃねーよ‼」
「何処で我儘を言おうが俺の勝手なのだよ。無駄口を叩いていないで、さっさと今日のラッキーアイテムのアテを探せ」
「偉そうにしやがってこの変人占い緑マン…」
「何 か 言 っ た か」
「イイエナニモー エースサマノオオセノママニー」
ギロリと睨む緑間を後目に、高尾は半ば諦めながらスマートフォンに指をひたすら滑らせる。
「…つってもなぁ、こんな田舎にアクセサリーの店なんて何処行ってもねぇよ!しかもシルバーのピアスとか今日に限っておは朝限定的すぎ!見付からねっつの!」
そう、彼らが今必死になって探しているものとは、本日の蟹座のラッキーアイテム『女性モノのシルバーのピアス』だった。
長期に渡って自宅を空ける際、緑間はどんなラッキーアイテムが指定されても良いように、過去発表されたモノから予測し、確率が高いと思われるアイテムをピックアップして合宿へ持ってくる。
今回も例に漏れず何十点か持ってきたのだが、どうやら予測が外れてしまったらしい。
それどころか、非常に手に入りにくいモノであった。それはそうだろう、こんな山奥だ。小洒落た店などはなく、更に周囲は男だらけ。見付かる筈もなかった。
「くっ…これが『シルバーのピアス』だけなら黄瀬の耳から引き千切って来たものを…!」
「いや真ちゃん、それ大惨事だから。普通にコエーよ」
「女性モノのシルバーのピアスなど、俺は所持していない。母のシルバーリングならあったのだが…」
「うーん…ピアス、ピアスねえ…………あ」
何か閃いたらしい高尾が、顔を上げて緑間に向き直る。
しかしその表情は何処か微妙な面持ちだった。
「いる、かも。一人…持ってそうな人」
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あかりんご(プロフ) - ずっっっと待ってます、また更新してくれるのを楽しみに待ってます! (2021年4月11日 16時) (レス) id: 9550685691 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - 続き待ってます…。不安定な所での更新停止中なので何だかウズウズしてしまいます…。 (2020年2月9日 3時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - こ、ここで?ここで更新停止中なの?!めちゃくそ気になんじゃん…更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年11月21日 18時) (レス) id: da8ce484b3 (このIDを非表示/違反報告)
紫水(プロフ) - とてもおもしろくここまで読ませて頂きました!この後キセキと真白ちゃんがどうなっていくのか、とても気になります…!お話の続き、待ってます!! (2019年11月2日 13時) (レス) id: 4db15d5771 (このIDを非表示/違反報告)
honoka1013(プロフ) - この続きがとても気になります。更新を再開してくれませんか?楽しみにしています (2019年9月3日 15時) (レス) id: f57eb90381 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁樹 | 作成日時:2016年12月24日 5時