113◆正義とは◆ ページ20
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人を罰するのは簡単だ。
思考を止め、結果的な悪を罪と断定すればいい。それだけで、周囲の人間は悪を罰しようとする。
悪を痛め付けることこそが正義と信じて、正義感に溺れた人間は悪を叩きのめす。
けれど、その逆はとても難しく――とても恐ろしいものだ。
人は悪を恐れ、嫌悪する。
だからこそ、率先して罰しようと拳を振り上げるのだ。
いつかその正義の拳が間違ったものだと知った時、自分こそが悪だったと知った時。
そして、今度は自分が責められる立場であると――思い知らされるのが、ひどく恐ろしかった。
「――ああ、認めるよ、桃井。俺は…俺達は、間違っていた」
何も考えずに、表面上で見えていることを鵜呑みにして、
けれど、それは大きな間違いだった。
「俺達は、もっと真実を知ろうとするべきだった。百合の話もAの話も聞くべきだった。A一人に全てを押し付け切り捨てて、目を逸らすべきではなかった……」
真白を信じるのが怖かった。信じたけれど、もし本当に真白が悪だったら?真白だけではない。信じて庇った自分も、今度は『悪人を庇った悪人』だと、指を指されてしまう。
悪の烙印を押されること。それが、何よりも怖かった。
そうして切り捨てた筈の『己の罪』が、今になって帰ってきた。
これは、罰だ。
自分達がおかした罪の大きさを思い知らせるために、火神Aはやって来た。
皮肉にも、真白と同じ姿で、罰を与えに来たのだ。
「…うん、私も同じだよ。Aを庇うのが怖かった。私が虐められてた時、Aはいつだって私を庇ってくれてたのに…」
「桃井…」
「だからね、赤司くん。私は本当のことが知りたい。何か少しでも手がかりがあるなら、それに縋りたいの」
火神AさんがAと同じ姿で私達の前に現れたのは、どうしても偶然には思えないから。
桃井は淡い桃色の瞳に強い決意を宿して、そう言った。
「そう、か……――そうだな」
「うん」
赤司も桃井も、お互いを見遣って強く頷く。
迷いはもう無いと、二人は笑って手を取り合った。
あっ、と赤司は何かに気付いたように「そう言えば、」と桃井に声をかける。
「何故、真白と火神Aが無関係ではないと頑なにそう思う?」
赤司の問いかけに、桃井はにっこりと不敵に笑うと、
「女の勘!」
と、そう言った。
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あかりんご(プロフ) - ずっっっと待ってます、また更新してくれるのを楽しみに待ってます! (2021年4月11日 16時) (レス) id: 9550685691 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - 続き待ってます…。不安定な所での更新停止中なので何だかウズウズしてしまいます…。 (2020年2月9日 3時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - こ、ここで?ここで更新停止中なの?!めちゃくそ気になんじゃん…更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年11月21日 18時) (レス) id: da8ce484b3 (このIDを非表示/違反報告)
紫水(プロフ) - とてもおもしろくここまで読ませて頂きました!この後キセキと真白ちゃんがどうなっていくのか、とても気になります…!お話の続き、待ってます!! (2019年11月2日 13時) (レス) id: 4db15d5771 (このIDを非表示/違反報告)
honoka1013(プロフ) - この続きがとても気になります。更新を再開してくれませんか?楽しみにしています (2019年9月3日 15時) (レス) id: f57eb90381 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁樹 | 作成日時:2016年12月24日 5時