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106◆それは"私"の怒りだった◆ ページ12



コイツは誰だ、と私は問う。
記憶を手繰り寄せ、記録をかき分け、回顧する。けれど、自身の記憶のどこにも、その女の存在はなかった。


「親友……だった、のに、――ごめんね」


知らないはずだ。自分には、親友と呼べる存在(モノ)などいない。いらない。知らない。そんなものは、必要ない。ならば、取るに足らない者の戯言だと無視すればいい。
それなのに、自分の中の『何か』が叫ぶのだ。「これを許してはならない」と吼えている。叫喚している。

その『何か』の声も、自身を親友だとのたまう女の言葉も、どうしてか無視できない。

女の首を掴む手に力が込められる。苦しさに喘ぐ女を、怒りとも苛立ちとも――あるいは恐怖とも取れる表情で見下ろしながら、掴む手とは逆の腕を高く振り上げた。


「!」


女は顔を逸らし、反射的に目を瞑る。目障りな視線は瞼の下に閉じられたが、しかし女の声は未だAの鼓膜を揺らし続けていた。


「A、ごめん。ごめんね」


ごめんなさい。ごめん。Aの耳が拾った声は、そんな懺悔の声だ。小さな声で、後悔の言葉を繰り返し言い続けている。
Aはギリ、と唇を噛んだ。
それは何に対しての謝罪かはAはわからない。けれど、どうしても無視できないことだと、自身の中の『何か』が叫んでいるのだ。


さあ、力を込めろ。腕を振り下ろせ。そして、

――その耳障りな女を黙らせろ!!


「こ、のッ……!」

「っ……!!」


女は今度こそ口をぎゅっと噤んで、来るべき痛みに耐えんとする。
しかしいくら待てども――ほんの数秒、いや、それより短いコンマ数秒ほどの時間だが――その痛みが、桃井を襲うことはなかった。

振り上げられた腕はその勢いのまま振り下ろされることはなく、何故か未だ空中に留められたままだ。
恐る恐る目を開けた桃井はAの顔に視線を向けて、ハッとする。
端整な顔はくしゃりと歪み、今にも泣き出してしまいそうな、かと思えば怒り狂ってしまいそうな――そんな不安定な表情をしていた。

何かと葛藤しているかの様に、あるいは迷子の子どもの様に、視線はうろうろと彷徨い、戸惑っている。

何か声をかけてやらなければ――そう思い、桃井が口を開こうとした瞬間だった。


「桃井ッ!!」


後方から聞こえてきた第三者の声に驚いたのか、Aはびくりと肩を震わせる。それと同時にAの両手もゆっくりと下ろされ、桃井は漸く解放された。


107◆もう逃げたくなかったと彼女は言う◆→←105◆伝えたい言葉◆



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設定タグ:黒子のバスケ , キセキの世代   
作品ジャンル:アニメ
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あかりんご(プロフ) - ずっっっと待ってます、また更新してくれるのを楽しみに待ってます! (2021年4月11日 16時) (レス) id: 9550685691 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - 続き待ってます…。不安定な所での更新停止中なので何だかウズウズしてしまいます…。 (2020年2月9日 3時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - こ、ここで?ここで更新停止中なの?!めちゃくそ気になんじゃん…更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年11月21日 18時) (レス) id: da8ce484b3 (このIDを非表示/違反報告)
紫水(プロフ) - とてもおもしろくここまで読ませて頂きました!この後キセキと真白ちゃんがどうなっていくのか、とても気になります…!お話の続き、待ってます!! (2019年11月2日 13時) (レス) id: 4db15d5771 (このIDを非表示/違反報告)
honoka1013(プロフ) - この続きがとても気になります。更新を再開してくれませんか?楽しみにしています (2019年9月3日 15時) (レス) id: f57eb90381 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:縁樹 | 作成日時:2016年12月24日 5時

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