【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ8)

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9色目｢信用を積み重ねるのは積み木を並べるより難しい｣。ページ8

トンテンカンテン、と釘を打つ音が聞こえる。古い壁の木を取り外し、新しい木の板に替えている最中だ。

｢一期。この部屋の壁はどれくらいで終わりそうだ？｣
｢もう少しはかかるでしょう｣
｢そうか、分かった。私はあっちの部屋で骨喰達と壁の木外してるから｣
｢承知致しました｣

私の顔をチラリとは見るが、やはり目線は合わせようとしない一期。はァ、警戒されてるな。

左奥の部屋に行くと、ヘラを持ち軍手をはめた骨喰が木の板を剥がしていた。

｢私も手伝うぞ。どれ、そこの脚立を貸してくれ｣
｢ど、どうぞ、審神者さま。あっ、虎くん、待って！｣

五虎退は部屋の片付けもだが、虎の世話でも忙しそうだ。うーん、あとで手伝ってやるしかない。何百年も生きている刀とはいえ、子供が1人で5匹の小虎を相手にするのはキツいだろう。

｢主さま。木片はあっちに置いていればいいの？｣
｢ああ、向こうに置いておいてくれ。ある程度集まったらまた私が捨てに行くから｣
｢分かった｣

小夜が私を｢主｣と認めたと知った粟田口は、大層驚いていた。まァ……予想される前審神者の｢仕打ち｣を考えると仕方のないことだが。一部は小夜を心配し、また一部は私に疑いの目を向けてきた。
それも、小夜の｢僕が自分で決めたことだから｣という一言で全て終わったのだが。

無言の骨喰の横で、ベリベリバキバキと壁を剥がしていく。老朽化していたおかげか、随分と剥がしやすかった。……いや、本来はここまで老朽化する方がおかしいんだがな。

｢……あんたは｣
｢？｣

不意に、骨喰から声をかけられる。

｢どうして、俺達にそこまでするんだ？｣
｢どうしてって……お前らの審神者だから。それだけ。審神者になっちまったんだったら審神者らしくお前らのために動かないといけないだろ｣

これだけ言うと、骨喰はそうか、と呟いてまた壁剥がしの作業に戻った。

さて私も、とヘラで壁を剥がし始めた時だった。

｢っ、痛っ!?｣
｢……？審神者、どうしたんだ？｣

またあの痛み(・・・・)だ。だがあの時程じゃない。脚に衝撃を与えないようにそろりと脚立から降り、そのままその場で横になった。

｢おい、審神者。審神者、いきなりどうした｣
｢いや……いや、なんでもない。脚が痛くなっただけだ。すぐに治まる｣
｢……そうか。……あんたは少し休憩した方がいい。朝からずっと動いているだろう｣

そう言うと、骨喰はひょいと私を抱き上げ手入れ部屋入口近くの縁側まで連れて行った。