32色目 ｢昔話に花を咲かせるのもまたいい気分だ。内容は……うん｣。 ページ34
ベッドの脇に座り、アニキは私に話す。
｢会うのは2週間ぶりくらいか？2週間しか経ってないのになんか1ヶ月以上会ってないような気分だな｣
｢あは、分かる。私も日々が忙しかったからなァ、1日が3日くらいに感じてた、いつも｣
｢あっはは、それは大袈裟｣
きょうだいがいると安心する。審神者になってから、きっと今が1番穏やかな気持ちかもしれなかった。
｢仕事はどう？あの求人、結構怪しかったけど｣
｢求人は怪しかったけど内容はしっかりしてたぞ。えっと……｣
『社員でいいんじゃない？』
それだ。
｢そう、社員も個性的な奴らばっかでな。まァちょっと上手くいってない奴らもいるんだけど、仲良くしてくれる奴もいっぱいいる｣
｢そうかそうか、良かった。お前は昔から人と衝突することが多いから、心配してたんだ。……特にお前が中一の時、学校の先輩と公園で殴り合いしたって聞いた時は焦ったもんだ｣
アニキは懐かしそうに微笑みながら、私の頭を撫でている。
｢ああ……そんなこともあったっけ。あの時はなんで喧嘩したんだったんだろうな？アニキ覚えてるか？｣
｢確か猫が、とか言ってた。ほら、あの頃は俺達拾った子猫が死んだばっかだったろ｣
｢んん……｣
記憶を辿って、なんとなく思い出したような思い出せてないような、そんな感覚に陥った。もう少しよく思い出そうとしてみる。
｢私、相手の情報とか言ってた？｣
｢いや、お前は何も。ただ学校一荒れてる人間だったとは言ってたな。どう考えても1番荒れてたのはお前だってのに｣
｢なっ、失礼な。私はそんなに荒れてなかったろ。だいぶ大人しい方だったぞ｣
ムッとしながら言い返したが、兄にとってはやはり可愛らしいだけのものらしく、ニコニコしながらずっと私の手を握り、頭を撫で続けていた。
｢お前が大人しいわけあるか。俺は覚えてるんだからな、相手が病院送りになったの。相手の家に菓子折り持ってったの俺なんだからな？｣
｢うっ……悪かったって｣
｢可哀想に相手の少年はすっかりお前に怯えてたよ｣
｢でも私が何もなしに手を出すことなんてないんだから、どうせその相手がなんかしたんだろ｣
ぽたぽたと垂れ落ちる点滴の横、私とアニキは語らいあった。主に私の喧嘩のことで。
本当に昔から私は荒れていたんだな。今では随分落ち着いた方だ。
｢……xxx｣
｢なんだ、アニキ｣
｢お前、なんかちょっと変わったな。仕事先で成長した？｣
｢……はは、そうかもな？｣
33色目 ｢確かにアイドルと言われるのも分かる、顔いいもん｣。→←31色目 ｢久しぶりに見るその顔に、私はすごく安堵した｣。
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作者名：蜂蜜パスタ | 作成日時：2024年1月11日 20時
