【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 伍色* (ページ28)

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26色目｢こいつとこんなに話を交わせるなんて夢みたいだ｣。ページ28

喘鳴だけが部屋に響いている。大和守は、私のすぐ隣に座っていた。

｢……まだ苦しい？｣
｢まあ、うん｣

頷くと、大和守は黙って下を向いた。

｢……僕さ｣

ポツリと大和守が呟く。言わんとしていることは、一体なんだろう。

｢お前……ううん、あなたが……そんなにも頑張ってるだなんて思ってなかった。……知りもしなかった。そんなに無理してるなんてこと、ずっと心の中で、否定する理由を探してた。あなたを嫌う理由を、こじつけてた｣
｢……｣

目線が床に向いたまま、大和守は続けた。私はそれを、心底意外だと思いながら聞いていた。

｢僕はもう、僕があなたの何に怒っているのかも分からなくなっちゃった。何も……何も直接手を出されたわけでも、なんでもないから｣
｢……そうか｣
｢一旦湧き出た怒りをコントロールする気にもなれなくて、怒り続けなきゃって思ったんだ。『審神者』は僕達の敵だから……だから、あなたのことも、敵だと思わなきゃいけないって、ずっと思ってた｣

仄暗い表情。だがおそらく本心だ。前審神者の残したものが、大和守をああさせたのだろう、きっと。
大和守は私をちらりと見て、またすぐ床に視線を移した。

｢……正直、今は後悔してる。おかしいよね、喘息発作見たからって、それだけでって。同情だと思う？それとも、僕があなたと沖田くんを重ねてると思ってるかな｣
｢後者には、そうだと答えよう。沖田総司は肺結核で亡くなった。私も……咳喘息の症状は重い｣
｢うん……そうだよね。僕も、重ねてるだけなんじゃないかと思ってる｣

私の胸元を見たあと、すっと顔を上にあげて大和守は言った。

｢喘鳴、鳴りやまないね｣
｢そうだな。いつまでもうるさい気管支だ｣
｢でも苦しそう｣
｢これより苦しいこともある｣
｢そっか｣

それでもほっとしたかのように、大和守は私に体を預けてくる。猫が擦り寄るように、そっと。

｢でも昨晩、あなたが死んでしまわなくて良かった｣
｢あはっ、この程度で死んでたまるか｣

未だヒューヒューと悲鳴をあげる胸元を他所に、私と大和守は長いこと黙りあった。

大和守がねえ、と声をかけてくる。何？と返事をして、まだ私の肩に頭をのっけたままの大和守を見た。

｢あのさ。今さら僕があなたを主って呼んだら笑う？｣

目を見開いた。大和守が、私を主と？

｢……逆に聞くが、呼んでくれるのか｣
｢そのつもりじゃなきゃ言わないよ｣

やっと顔をあげた大和守は、困ったように、悲しげに笑っていた。