太宰治:魔法使い ページ20
どこにでもある公園で、どこにでもありそうな噴水の前で、一人の女が手品を披露する。
ステージであるこの場は、確かに"どこにでもある"のに女の手品がそれを一流の舞台へ変えてしまうのだ。
『お集まりの皆様!このなかでお手伝いくださる方はいらっしゃいますか!!』
大人しそうな容姿に似合わぬ声量。
トランプを意識したであろうロリータ服に身を包みながら辺りを見回した。
日々の刺激を欲する彼は、つい、声の大きさにつられて手を上げる。それが無意識の行動だと気づくときには遅い。
彼は女に指名され、手を引かれて女の隣へ並ばされる。
『さぁさぁさぁ!お好きなカードをお選びください!!』
バッと扇状に開かれたトランプを目の前に出される。在り来たりな"選んだカードを当てる"というものだろう。
彼はにこやかな顔で一枚、カードを選び取り客席へ見せる。
「これは戻せばいいのかな、お嬢さん?」
余裕の笑みは女を馬鹿にしているようにも見えた。
『いいえ、私はそのカードを使いません!!』
女は手元に残ったカードを勢いよく空へ投げた。観客たちは投げられたカードを目で追ってしまう。
『えいっ!』
パチン、女が指を鳴らせば、宙を舞っているトランプはたちまち綺麗な花やお菓子へと姿を変えた。
そして、彼の持っているカードを指差した。
『最後はこれです!』
ポンッと軽やかな音を鳴らして、選ばれたカードは薔薇の花束へと変わった。
女は英国の紳士がするようにお辞儀をすれば、ショーはおしまい。パチパチ拍手を女に贈って人々は笑顔で散ってゆく。
ただ一人、彼を除いて。
『おや、お楽しみいただけなかったですか?』
「いやいや、十分に楽しませてもらったよ・・・・・・ところで、これは異能力かい?」
『違いますよ!魔法です!』
「へぇ・・・・・・君は魔法使いなのだね」
『そうですよ!』
女は近くに置いていた鞄を持つと、本当の最後に此れを・・・・・・と、宙を舞わせたカードから作られた花を彼に渡す。
その花は優しく光ると、形を変えて小さなブローチになった。
「本当に・・・・・・」
『えぇ、まだ修行中ですがね』
では、と去ろうとする女を彼は慌てて呼び止める。
「私は太宰治という者だ、もしまた近くへ来たら武装探偵社を訪ねてほしい!」
『・・・・・わかりました』
女は大きめのシルクハットを被ると、彼_____太宰の方へと顔だけ向けた。
『私は魔法使いのA、その"もしも"があれば伺いましょう』
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黒月夜*(プロフ) - 抹茶党さん» ありがとうございます!条野さん可愛い!! (2019年3月14日 8時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
抹茶党 - リクエスト書いて下さりありがとうございました。(o^−^o)条野さん優しいvvv (2019年3月14日 7時) (携帯から) (レス) id: 28273e2d77 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶党 - リクエストお願いします。家族を失ったトラウマで悪夢を見る夢主を励ます条野さん夢をください。 (2019年2月17日 21時) (携帯から) (レス) id: 28273e2d77 (このIDを非表示/違反報告)
黒月夜*(プロフ) - ハイドさん» わかりました!頑張ります! (2019年2月17日 20時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
ハイド - リクエストで、何でもいいので敦お願いします! (2019年1月27日 16時) (レス) id: 555b483480 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒月夜 | 作成日時:2019年1月7日 19時