*今吉翔一にわがまま*1* ページ16
「あっ……ちゃー…………」
「どないしたん?」
戸棚を開けた瞬間、やらかした、と気付いた私は思わず呻いた。ダイニングの上に新聞を広げた翔一が尋ねてくる。
「砂糖のストックを買ってあると思ったら買ってなかった……」
「ほお、Aがそういう事忘れるなんて、珍しい事があるもんやな」
この前塩を買った時、一緒に買った気になっていたという訳である。
いつもならこんなポカはしないのに、
よりによって、ゆっくり出来ると思っていた土曜日の朝にやらかすなんて。
「申し訳ない……」
項垂れた私の頭に、翔一の手が添えられた。
「人間生きてたらたまにはこのくらいの失敗はするもんや。
ワシとしてはむしろ、Aも人間なんやなあって思えて良かったで?
自分はいつも気ぃ張り過ぎや」
……そりゃあ、超有名大学を出て絶賛エリートコースまっしぐらの翔一くんのお嫁さんとして、釣り合うように努力するのは当然でしょうよ。
「あーそれやそれ。分かっとらんのかもしれへんけど、Aは頑張り過ぎんでもじゅーぶん素敵で才色兼備なワシの嫁さんやゆうてんねん」
「サトらないでよ……褒めてもなんにも出ないよ?」
「はは、すまんなあ。いっつも優秀な嫁さんの可愛いミスが可愛くてつい面白がってもうたわ。
それで?砂糖買いに行くんやろ?」
にやにやしている翔一。この人は妖怪なんて呼ばれるくらい恐ろしく頭脳明晰なのに、蓋を開けてみればとんでもないデレ放出器なのだった。本当に人間というものは分からない。嬉しいけど。
「うん、すぐに帰ってくるから」
と、翔一が露骨にがっかりした。……可愛い。
「えぇ?ワシ連れてってくれへんの?」
「え!?砂糖買いに行くだけだよ?」
「休日やのに嫁さん1人で行かせる奴がおるかっちゅうねん。車運転するで」
いつの間に取り出した車の鍵が付いたキーリングを指でくるりと回す翔一に、
もはや反論できるはずもなく。
「……じゃあ、お願いします」
「任せとき。あ、そうそう、ちゃんと可愛い服着て来るんやで」
砂糖買いに行くだけなのに、デート気分かこの人はと思ったら、翔一はまたニッと口角を上げたのであった。
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ゆな子(プロフ) - 高尾ちゃん&笠松&黛は一番キタわ。心臓が3ついりますね。 (2019年8月27日 17時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
赤 - 最高でした。赤司くんと黛さんのが特に最高でした。きゅんきゅんしました!!!! (2018年9月4日 12時) (レス) id: 14fcda4380 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - 大ちゃんありがとうございます!いつも楽しく読ませて貰ってます!!大ちゃんに萌えましためっちゃ(笑) (2017年9月30日 8時) (レス) id: b6dcf803c3 (このIDを非表示/違反報告)
伊月千歳@白咲智歌(プロフ) - もろへいやさん» そうなんですか!わかりました! (2017年9月24日 9時) (レス) id: e71731f15b (このIDを非表示/違反報告)
もろへいや(プロフ) - 伊月千歳@白咲智歌さん» 大変申し訳ないのですが、こちら残り話数がかなり少ないので、現在リクエストにはお応え出来ません。本文中に明記せず本当にすみません……ご理解頂けると幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年9月23日 23時) (レス) id: 0747be2c14 (このIDを非表示/違反報告)
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