第四十二夜 涙を止めるには舌先を噛むといいらしい ページ2
「そいつはさ、あたしが幼過ぎて覚えてないときからあたしのそばに居た。……でも、あたしが九歳ぐらいのとき、“何か”があったんだ」
実を言うと、Aはその時のことをあまり覚えてなかった。
覚えているのは、その昔の同士がある子どもを連れて来たことだ。
「…………」
ジュダルは何も応えない。寝ているのだから当然のことだ。
だが、Aは続けた。聞かれてなくてもいい。声にして吐き出したかった。
「そいつが連れて来たその子はね、アラジンだったんだと思う。まだ赤ん坊だったし顔も一度ちらっと見ただけだけど、思ったんだ」
＿＿＿あぁ……この子があたしの“代わり”なんだな、って。
「まぁ、当然だよね。あたしは、使命を果たそうとしてなかったし。……ううん。あたしには果たせないから」
だから安っぽい感謝の言葉にも、自分を必要としてくれたジュダルの誘いも嬉しくて、嬉しくてたまらなかったのだろう。
これが、他人に必要とされるということなんだと。
Aの目からは、いつの間にかたくさんの涙が溢れ出ていた。
「おかしいよね。人を何人殺しても、どれだけ酷いこと言われても、涙なんて出なかったのにッ………」
上を向き、必死に涙をこらえるが、止まらない。
破れてしまっている服の袖で、手で、何度も何度も目をこするも、涙は止まらなかった。
「んっあれ、A？ なんで泣いてんだよ……？」
「っ、ごめん」
「いやっ……謝られても………」
ジュダルは額に汗を浮かべ、困惑した顔をする。
無理もないだろう。今さっきまで寝ていて、起きてみたら隣で女が泣いているのだ。
「……………お、おい……」
「ごめっ……ごめんっ……」
＿＿＿ぽふっ
＿＿＿え。 っと小さな声を漏らし、目を丸くする。
顔が、何かに優しく触れた。ゆっくり顔を上げると、目の前にはジュダルの顔があった。
自分が彼の手の中にすっぽり収まってることに驚いたAは、石化したように固まって動かない。
「そのっ、あれだ。泣き止まねーから、励まそうと……だな……」
「…ぷっ」
「なっ！なんだよ！？」
「嬉しい。……ありがと」
そう言って、優しく笑顔を向けるA。
不意を突かれたように一瞬動きが停止するジュダル。
「なっ……………おう」
Aは顔をジュダルの胸板に深くうずめる。
ジュダルはさっきよりも優しく、強く、Aをギュッと抱きしめた。
「なぁ……あのさ」
第四十三夜 拒否ポーズ→←第四十一夜 独り言は控えないと頭可笑しいと思われる
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 178人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
爽やか中一 - エヴァって良いよね、マギって良いよね、この小説最高。うん、フォント煮最高←分かるかな？ (2020年8月16日 21時) (
レス) id: 11099bdacf (このIDを非表示/違反報告)
まっちー☆ - なぜ私がマギなんだー(`∀´) (2013年12月24日 15時) (レス) id: 788e6f575e (このIDを非表示/違反報告)
にゃんにゃん子猫(プロフ) - 猫子さん» お返事すご遅れてすいません。 馬鹿じゃないですよ！私はお馬鹿さんですけどww コメントありがとうございます( ´ ▽ ` ) (2013年7月23日 20時) (レス) id: a7231b0c94 (このIDを非表示/違反報告)
猫子(プロフ) - 73夜の〈その夢が真実ですよ〉をくその夢とよんだ私は馬鹿でしょうか？小説おもしろいですよ (2013年7月14日 10時) (レス) id: e283e186ef (このIDを非表示/違反報告)
にゃんにゃん子猫(プロフ) - Ｒiｏさん» 番外編作ったので、是非見てください！ 応援ありがとうございます^^ (2013年6月17日 7時) (レス) id: a7231b0c94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にゃんにゃん子猫 | 作成日時：2013年5月27日 17時
