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Aさんから話があると言われて彼女に会う。
予想された通り別れ話を告げられ、俺は想いの丈を話した。
だって俺はAさんのことが心から好きで、貴女と一緒だったら地獄に落ちてもいいとさえ思ったから。
すると何かを決意したかのような目になったAさんがこう言った。
「托卵って分かる?」
一瞬何を言ってるのか分からなかった。
「托卵って……カッコウとかが違う種類の鳥の巣に卵を産むやつ?つまりは……」
その先を言うのは恐ろしくなった。
「俊哉くんとの子供が欲しい」
Aさんは俺のシャツまで脱がしていく。
「でもその子は表向きには旦那さんとの子……」
地獄の入口が鼻先にまで近くなってる気持ちに襲われる。
「それ、とてもハイリスクだよね?旦那さんが疑念を抱いてDNAを調べちゃったら……」
俺は悲しくなった。
俺がAさんをそうさせた?
もしくは元々隠されていたものが引き出された?
首筋にキスされて声が出る。
Aさんが主導権を握るのも珍しい。
「夫とそろそろ子供、なんて話になって。でも夫との子を抱いてる自分は想像できなくて。だけど俊哉くんとの子を抱いてる自分は想像できた。私だったら秘密を隠せる」
「……Aさん似だったらいいな」
彼女の髪を撫でる。
そして俺も唾を飲み込む。
「……Aさん」
意を決してその唇に口付ける。
キスをしながらAさんのスーツを脱がしていく。
「俺と地獄に落ちてくれるの?」
「……ごめんなさい、私が好きになったから」
「ううん。俺が最初にキスをしちゃったから」
「私、本当に俊哉くんが好きだから、愛してるから」
「伝わってるよ。俺も……愛してるよ」
彼女の瞳から零れる涙に口付ける。
俺は彼女が好き、彼女も俺が好き。
それだけでいい気がしてきた。
だから俺は地獄へと行く。
貴女と一緒にいけるのならどこまでも落ちていける。
その夜お互い草臥れるまで愛し合った。
互いの胸に去来する罪悪感や空虚感には目を瞑った―――。
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2021年9月11日 17時