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それから数ヶ月経った。
俺とAさんとの関係はバレることなく、元通りになった。
「お前主任と別れたの?」
エレベーターで二人きりになったとき、タマに言われた。
「Aさんには旦那さんがいるからね」
「にしては元気そうだけど」
さすがに親友相手にもあのことは言えない。
「彼女欲しいな、ちゃんとした」
それがAさんのためになるから。
俺は俺の人生を歩くこと、彼女は彼女の人生を歩くこと、それがカモフラージュになる。
「へえ。大した心変わり。お前だったら出来るんじゃない?」
「タマ紹介してよ」
「自分で探せ」
「えー」
でもAさんの提案ってどう転ぶか分からないよね。
彼女だったら分かるかもしれないけど。
まあどう転んだって俺のすべきことは。
「うちの部署はおめでたいことが続くね。聖来さんもだし、主任もだし」
「そうだね」
「主任の後釜どうすんだろ」
「ここぞとばかりに課長が張り切るんじゃない?」
「だな」
エレベーターはもうすぐ俺たちの部署のフロアに着く。
「お前本当に未練ない感じ?」
「未練、ねえ」
タマはいつも俺のことを心配してくれるよね。
「ないと言えば嘘になるけど、元々不毛なものだったわけだし」
だけどそんな親友に少し嘘を吐く。
未練というのは完全に終わったときに発生するもの。
俺たちは完全に終わらせたわけじゃないから。
「ふーん」
タマがそう言ったところでエレベーターがフロアに到着する。
エレベーターを下りれば俺とタマも仕事に戻るんだけど、俺は。
「戸山主任」
小声で体調が優れてなさそうなAさんに声をかける。
「あまり無理なさらないで下さいよ」
「ありがとう。宮田くん」
答えはいつ明らかになるのか。
ハイリスクなのは明白でローリターンになるのかハイリターンになるのか、とんでもないギャンブルだ。
どんなリターンになったとしても、またリスクをかければいい。
もう俺たちは地獄に落ちたんだから、後退りなんてしない。
ですよね、Aさん。
なんて視線を送れば、貴女は綺麗に笑った。
だから俺は微笑み返した―――。
END
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2021年9月11日 17時