Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ36)

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Episode42 -2 ページ36

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さっさと準備をして家を出る。

マンションの前の路地には、当然誰もいない。

「翔さんはまだ、………こないんだった」

ついいつものように翔さんを探しかけてかぶりを振る。

翔さんが迎えに来ないことはこの一週間以上当たり前だったはずなのに、こうして翔さんを探す癖が抜けない。

それは昨日の今日でも同じだった。

いい加減慣れなければいけないけど、そう思うとこの一週間ちょっと翔さんが迎えに来ていなかったことはいい練習だったのかもなんて、無理やり頭に刷り込んだ。

一人、朝の道を歩く。

路地を進んで、やがて大通りにぶつかる。

曲がったところにある薬局はまだ営業時間前でシャッターが閉まっていた。

いろんなことがあったなぁと、この数か月を思い返す。

走ってこの薬局に駆け込んだことがずいぶん前の話に感じられる。

そういえば、翔さんに言われたという松本さんがここまで迎えに来てくれたこともあった。

そんなに前の話じゃないはずなのに、なんだか遠い日の思い出みたいに感じられて寂しくなる。

今頃翔さんはどうしているだろうか。

今日は出勤だと言っていたけど、さすがにお昼の仕事は入っていないんだろうか。

お願いだから病み上がり早々無理をするような仕事はしないでほしい。

そのくらいなら、翔さんに伝えてもいいだろうか。

信号待ちの間に鞄からスマホを取り出す。

今でも、チャットアプリの一番上に翔さんのトークが表示されている。

ずっと、ずっとそうだった。

それだけ私は翔さんと連絡を取っていたのだ。

特にこのところは、会えない時間もあったから。

チャット画面を開いてメッセージを打ち込む。

『おはようございます。今日からお仕事ですよね？くれぐれも無理だけはしないでくださいね』

けれど、送信ボタンを押す手がなかなか動かなかった。

信号が青になったのに気づいて、慌てて向こうへと渡る。

わたりきってから立ち止まってまた画面に目を落とした。

何度も文章を確認して、おかしなところはないか考えて。

ためらいながら、それでも何とか送信ボタンを押してから歩き出した。

ほんのちょっとでいいから、翔さんに私の想いが届けばいい。

届いていれば、それでいい。

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