Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ37)

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Episode42 -3 ページ37

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スマホをしまい込んで私はキッチンカーまでやってきた。

中にはいつものように雅紀くんがいて、私を見つけると笑顔を浮かべて手を振ってくれる。

「おはようA、早いね」

「うん、ちょっとね」

「……なんかあった？」

さすが雅紀くん、目ざといなぁ。

注文を聞くよりも早く雅紀くんは心配そうな顔を私に向けた。

「そんなにわかりやすい？」

「ううん、俺だから気づいただけ。ちょっと寂しそう」

そういう雅紀くんの方がなぜか寂しそうだ。

カウンターに肘をついて私の顔を見下ろす。

「ふふ、雅紀くんに隠し事はできないね」

嬉しいような、不思議な心地になった。

雅紀くんは本当に私のことをよく見てくれている。

私みたいな不安定なのがそばにいることが申し訳ないくらいだ。

雅紀くんも私がいなけば、もっと自由に生きられただろうに。

けれどその温もりが、今の私にはありがたかった。

「実はね……櫻井さんと昨日お別れしてきたの」

「え！」

雅紀くんが丸い目を大きく見開く。

大きな声を上げた口をパッと手でふさいだ。

言葉を飲み込むようにパチパチと何度か瞬きをして、ずいと私に顔を近づける。

「な、なんで？あんなにラブラブだったじゃん」

「ラブラブって…」

雅紀くんの言い方に首筋が熱くなる。

その私の反応を見て、雅紀くんはますます眉を下げてしまった。

「まだ好きなんでしょ？どうして…」

わたしよりも悲しそうな顔をする雅紀くんにどう伝えようかと考える。

翔さんの複雑な話は勝手に私がするわけにはいかない。

ちょっとだけ言葉を噤んで、それから口を開く。

「…好きだから、かな」

「好きだから？」

「うん」

翔さんのことが好きだから、何ができるかとずっと考えていた。

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