帰ってきた「君のその手に」【完結】

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言ってしまった。


桐谷部長の気持ちがまだ宏光にあるんじゃないかって。
そんな事バラして宏光の気持ちが桐谷部長に向いちゃったらどうすんのよ、



でも、宏光はわかってるんだね。
長く付き合ってたんだもん、桐谷部長の表情一つで自分を想ってるかどうかなんて･･･。



私には入り込めない、二人の世界がそこにはある。



そう気が付くとさっきの今なのにまた宏光が取られちゃうんじゃないか、って恐怖心と、嫉妬心に苛まれる。



崎本部長の事も責められるし
それで仕事辞めて欲しいとか、もう無茶苦茶だよっ･･･、




宏光の事、信じて？って言われたのに。
信じてるけど、宏光が他の人を少しでも想ってるって考えると悲しくて止まってた涙がまた溢れ出す。





「ごめん、A。今日はもう寝よ、」




お互い感情的になってて今話しても罵り合いしかないよね。
宏光とこんな言い合いしたくないのに。



それでも涙が止まらなくて
一人、リビングに向かう。



ソファにうずくまって考える。








仕事、もう続けられないのかな。
確かに、勤務中に発作が来たりしたら仕事にならなくなるし皆にも迷惑をかける。



どうしたらこの発作が止められるか、なんてわからないし宏光が言う通り、仕事がストレスになってるのなら･･･、




今なら冷静に考えられるのに
崎本部長との事で嫉妬してる宏光に言われても全然飲み込めなかった。



きっと、宏光はちゃんと私の体も考えてくれての事、なんだ。



寝室に戻ってベットに潜り込んだ。
私に背を向けて横になってる宏光、･･･起きてるのかな？



色んな不安が押し寄せてきて
一緒のベットの中にいるはずの宏光が遠い。



その背中に抱きつきたくて堪らなくなったけどやめておいた。



せめて、その体温だけを感じて不安を払拭するように目を閉じる。





朝起きて、いつも通り。
二人で朝食を食べる。



この二日間、休みをどう過ごすんだろう。
ちゃんと話し、できるのかな。
でも、また堂々巡りになる気しかしない。



結局この休日はお互いが特に会話すること無くお互いの時間を過ごして、その話しが出る事はなかった。



月曜日。
二人で朝食を食べ、一緒に駅に行って
いつもと同じ電車に乗る。




行ってきます、と宏光が言って
行ってらっしゃい、行ってきます、と言う私。



いつもと同じやり取りなのに
それはどこかいつもと違う。



宏光を電車内から見送ってから大きなため息が零れた。

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