128話:いつもどおりの ページ35
「もういいですか?
僕2人を看病しなくちゃいけないんですけど」
呆れた目で自分に抱きつく先輩を見れば、彼は恥ずかしそうに笑って離れていった。
「あの、本当ごめん…
じゃあAちゃんと孫兵くんによろしくね」
「はい。
伊作先輩も、今から走っていけば先生の説教軽くなると思いますよ」
さっき授業開始のチャイム鳴ってましたし、と言えば、善法寺伊作は柔らかな印象を受けるその顔を青ざめさせた。
「………やばい」
「早く行ったらどうですか」
まだ目頭が赤い彼は慌てて立ち上がり、六年の教室へと走っていった。
……しかし、ここでも不運に見舞われるわけで。
彼は一丈(約3m)も走ったところで綺麗に転び、盛大な音を奏でた。
「へぶっ!」
「せんぱい!?」
思わず大声を出し、彼に駆け寄る。
……まあ、二次災害きますよね。
「大丈夫!痛くない!」
そう言って勢い良く顔を上げた彼の後頭部は見事に僕の顔にクリーンヒットし、鈍い痛みが鼻を襲った。
「ぶふっ、」
「わああぁかずまあぁぁあ!」
「だっ、大丈夫です……
鼻血出てないからセーフ…」
ぐぬぬ…と鼻を押さえて悶える。
これは赤くなるかもしれないな、なんてどこか冷静な頭で考えてみたが、やっぱり鼻痛すぎて涙が出た。
「先輩、僕の事はいいですから授業行ってください…」
「でも……」
「大丈夫です、こんなの慣れっこですから」
丁度井戸に行くのでそこで冷やします、と説得すれば、彼はしぶしぶながらも教室の方へ歩きだした。
「あっ、待ってください」
ふと思い出した事があり、彼を引き止めた。
「何?やっぱり僕が治療しようか?」
「いえ、それはいいです」
それはいいんですけど、と言い、先ほどの言葉を訂正した。
「さっき、『保健委員だから』と言ったでしょう。
あれ嘘です」
「え!?」
「僕はきっと、保健委員じゃなくても伊作先輩の事を心配してました。
だから、あまり気に病まないでください」
これは本心だ。
本心だからこそ、羞恥で顔が赤くなる。
伊作先輩はその言葉を確かめる様にしばらく目を泳がせ、理解した途端満面の笑みとなった。
「うん!ありがとう!」
そう言って走り去る彼を見送り、僕も井戸に行かなくてはと立ち上がった。
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河鳴(プロフ) - さくらんぼぱいさん» 前作からありがとうございます!ギャグとかほざいてたクセにシリアスたっぷりですが、よろしくしてやってください! (2015年6月15日 19時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼぱい(プロフ) - すごいおもしろいですー。笑更新がんばってください。応援しています (2015年6月15日 18時) (レス) id: eb5c2b9479 (このIDを非表示/違反報告)
河鳴(プロフ) - 吹雪夏海さん» 今までノーマルだった夢主ちゃんはショタへの目覚めに戸惑うこともあるでしょうが、生温かい目で見守ってくれたら幸いです!応援ありがとうございます! (2015年6月14日 22時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪夏海(プロフ) - 河鳴さん» wwwショタ夢主って大好きですw面白いから【真顔…更新応援してます!! (2015年6月14日 22時) (レス) id: ffcea8df34 (このIDを非表示/違反報告)
河鳴(プロフ) - 吹雪夏海さん» コンセプトは「とにかくショタ」です( *`ω´)前作が久々知オチでしたので、今回はとにかくショタです。上級生もギリギリショタとか知らない。ショタが許されるのは小学生までです。これからも夢主ちゃんのショタコンへの変貌っぷりに乞うご期待です! (2015年6月14日 0時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:河鳴 | 作成日時:2015年6月3日 19時