#story 3 ページ4
自分の鞄をまさぐり、あるはずもない煙草を探す。
(焦った…)
最悪な寝起きだ。
左馬刻にあんな余裕も穏やかさもない目付きで見られたのは初めてだ。年下でも身長も体つきも大きい差があって、逃げ出せない焦りのせいか、手首を拘束する彼の手を振りほどくことも出来なかった。
確かに、何度か警告されたことはあった。
そんな格好で寝てっと、襲っちまうぞ。なんて思春期の中高生向けの漫画みたいな言葉で。
──随分と余裕そうじゃねェか
低く掠れた声が頭の中で再生される。左馬刻にはそういう風に見えたのだろうか。実際、余裕なんて無かったし、心臓が弾けるんじゃないかと思うくらい、動悸が激しくて苦しささえ感じた。
そして部屋の入り口付近には、銃兎がいて。目が合った瞬間、私は、中学時代を思い出した。仕方がないだろう。さっきまで男に押し倒されていたんだ、そういう気分にされた私は、最早これ以外思い浮かばなかった。
──…好きです。
卒業式まで後数日といったところで告白を受けた。生徒会長と副生徒会長。私達は将来の夢は似ていたのに、行く予定の高校は別々だった。
遠距離恋愛は続かない。
本気で好きになってくれたなら、しっかり受け止めたい。中途半端なフェードアウトで終わらせたくなかった。
「言っておくが、俺は本気だからな」
いつの間にか後ろにいた銃兎がよく通る声で話すもんだから、びっくりして肩が跳ねた。
誤魔化すようにゆっくりと振り向き、茶目っ気たっぷりに微笑んだ。
「そう。期待しておくわ」
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作者名:理麻 | 作成日時:2018年11月7日 2時