静止した闇の中で ページ10
2003年
―箱根・人工進化研究所―
「……」
「あら、おはよう―――ちゃん…って、どうしたの！？顔が真っ青よ…？」
「…ナオコさん。大丈夫、何でもないよ…」
「大丈夫って…ふらふらじゃないの。ほら、こっちに来て」
彼女はナオコに連れられ、強制的に医務室へ。
「暫くここに寝てて。何か欲しいものとかある？」
「本当に大丈夫ですって…それより、早く研究進めなきゃ」
医療ベッドから体を起こそうとする彼女を、ナオコは呆れ顔で見る。
「研究って…その前に、貴女の体が壊れたら元も子も、」
「私の体なんてどうでもいいんです」
はっきりと、彼女は言い放つ。
ナオコは彼女を見やる。そして、覚えたのは違和感。
無意識のうちに、ナオコは彼女から一歩退いていた。
じっと、瞬きもせず彼女は地面を見ながら強い口調でこう続けた。
「私の体なんかより、皆を助けなきゃ」
それからすぐ、彼女は人事異動となり、海外へ行くことになった。
彼女は人当たりもよく優秀であったため、同じ研究所に所属する研究員たちは別れを惜しんだ。
当の本人である彼女は、送別会の時でさえも何かを気にしており、落ち着かない様子だった。
「ここまででいいよ、ゲンドウ。ありがとう」
日本を飛び立つ日、研究所の所長であるゲンドウが彼女の見送りに来ていた。
他の研究員たちも来たがっていたが、研究忙しいでしょ、と彼女がやんわり断った。
「意外だったな。お前が異動を受け入れるなんて」
「別にみんなが嫌だったとかじゃないよ。あそこにいる人は、みんな好き。
勿論ゲンドウも」
やけに素直に話す彼女。
かつて、嫌味を言いあっていた仲とは思えないような発言だった。
――何かに憑りつかれているようでした。
ゲンドウはナオコの言葉を思い出す。
ナオコからそう報告を受けた日から、確かに彼女は変わった。
笑顔が以前より減り、常に何かを考えているようだった。
人のところに来てちょっかいをかけるのが好きだった彼女は、自分の研究室に引きこもりがちになった。
常に目の下には隈ができていた。
何かを、彼女は憑りつかれているようにずっと見ていた。
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＊ ふぅ夜 ＊(プロフ) - 思わず一気読みしてしまいました。主人公の心情やカヲルくんとの絡みに内心ドキドキしていますが、これからどうなるのか楽しみにしています！ (2023年3月14日 14時) (
レス) id: 57777bfa3c (このIDを非表示/違反報告)
たったかたー。 - 好きです!!更新がんばってください!! (2022年2月11日 13時) (レス) @page22 id: 6472def61e (このIDを非表示/違反報告)
如月真(プロフ) - おわぁぁぁ！！面白いですぅぅぅ！！ (2021年8月17日 22時) (レス) id: 57a41376e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白 | 作成日時：2021年7月11日 18時
