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怒りで身を乗り出しそうになるところを、冬月副司令の言葉でぐっと堪えた。
「椿はトリガーになろうがならまいが、短い命だった。君が椿に最後に会った時、彼女の余命は残り数日となかっただろう。
死に際を決めたのは、あの子だよ」
…最後に会った時の椿の顔には、思わず目を逸らしたくなるような酷い火傷があった。
それだけではなく、以前よりやせ細り、その表情はやつれていた。
とても健康そうとは思えない、その身体。
『……っ』
私は力任せに将棋盤を拳で叩いた。
綺麗に並べられていた駒が床に落ち、乾いた音が部屋に響いた。
なんて、
なんて、自分は無知で無力なのだろうか。
椿が望んだことだとしても、私はこの人達を許せない。
でも、それ以上に…自分が本当に椿のことを何も知らなかったんだと思い知らされた。
何も、私は力になんてなれていない。
何が助けるだ。
自分への怒りと、悔しさに爪が食い込むほど拳を握り締める。
私がやおら口を開こうとすると、その前に冬月副司令が口を開いた。
「だが、まだ彼女を救う方法はある」
『…え？』
先程の言葉と矛盾したその発言に、私は再び顔を上げ副司令を見やる。
冬月副司令は私が床にばら撒いた駒の中から一つ拾い、”桂馬”と書かれた駒をじっと見ていた。
「ユイ君のことはもちろん、碇は椿も取り返そうと画策している」
ゲンドウの目的は、ユイと再び会うこと。
そのために世界をも巻き込み、他人を利用することをも厭わない執念が、静かな彼の心の中にぐるぐると渦巻いている。
だが、それだけではなくそこに椿も含まれている、と。
ユイは初号機と融合したため、再会することが可能かもしれない。
けれど、副司令の話では椿は完全に死んでしまっている。それなのに、どうやって助け出すのか。
それに、まるで――
「椿は全ての始まりの地――そして同時に終わりの地である、カルヴァリーベースの先に隔離されている。
そこに辿り着くことができれば、彼女は戻ってくる」
取り返すだなんて、椿が誰かに取られてしまったような口ぶりだと思った。
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＊ ふぅ夜 ＊(プロフ) - 思わず一気読みしてしまいました。主人公の心情やカヲルくんとの絡みに内心ドキドキしていますが、これからどうなるのか楽しみにしています！ (2023年3月14日 14時) (
レス) id: 57777bfa3c (このIDを非表示/違反報告)
たったかたー。 - 好きです!!更新がんばってください!! (2022年2月11日 13時) (レス) @page22 id: 6472def61e (このIDを非表示/違反報告)
如月真(プロフ) - おわぁぁぁ！！面白いですぅぅぅ！！ (2021年8月17日 22時) (レス) id: 57a41376e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白 | 作成日時：2021年7月11日 18時
