第四十三話「君を変える」 ページ45
「私は、貴方に変えられる程簡単な女じゃないわよ。」
胸に棘が刺さる様な違和感を感じながら、私は彼にいつもの様な態度を取る。
「はい。それは存じております。」
条野さんもいつもの飄々とした態度を取り、横浜の夜景を遮り私の顔を覗き込む様に顔を向ける。
「楽しみです。今のその生意気な態度を取っているAさんが、本を齧る虫の様な生活から人と触れ合い柔らかな性格の女性になったら皆さん驚き過ぎて阿鼻叫喚しますよ。」
「…それ、貴方にメリットがあるの?というか、何故そんな考えに至ったか、教えてくれる?絶対お父様関連よね?」
「五月蝿いですね。いっぺんに多くの事を聞くのはやめてください。」
私は此処で軽い深呼吸をして、もう一度彼に問う。
「なんで、急に私を変えようと?」
「…単に今の貴女が地味で見るに堪えないからですよ。」
それが嘘であっても、少しだがムッとなってしまう。というか、私の事見た事ないのに見るに堪えない…て皮肉なんだろうが不謹慎で笑えない冗談である。
「私を変えてメリットはあるの?」
「そうですね、貴女の通っている大学は随分と貴女を恐れ敬って崇め称えられ忌み嫌ってる人がいるそうで、現状でもとても面白いと思っています。」
「そんな私を厄神みたいな言い回ししなくても。」
心外である。彼等彼女等は私の事を何だと思っているのだろうか。
「ですが、そんな厄神が急に地に落ち人間臭くなったら、周りは驚き…それもそれで面白そうだと思いませんか?」
条野さんは此処で、月光に照らされながら優しい微笑みを浮かべる。私は彼のその顔を「神秘的だ。」と思いながら、「厄神と言いましたね?」とつっこむ。
「あと何度も話すようですが、貴女のお父様とは確かにお話しました。が、本当に他愛も無い世間話しかしておりません。
貴女を変えたい、と思ったのは個人の気持ちです。」
「…そう、なの。」
いつもの胡散臭い表情を浮かべる彼が、真面目な顔で私にそう説得する。とても違和感を感じるが彼がそこまで言うのであればそうなのだろう、とチョロい思考が私の頭の中に浮かぶ。
ん?いや待て。そしたら私が彼を信頼しているみたいになっていないか?それは違うぞ。確かに私は彼に何回も助けられたり(主に巻き込まれである。)はしたが、彼の人間性はとても酷いものだとずっと分かっていただろう。
「…あ、あれえ…?」
「頭を抱えてどうしたのです?馬鹿丸見えですよ。」
第四十四話「Good night」→←第四十二話「この夜を君と踊りあかす」
66人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» わーいありがとうございます〜もっと頭悪い小説にするので何卒〜 (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - そう言っていただいて嬉しいです…!作品いつも楽しく読ませて貰ってます! (2022年7月28日 10時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» いや草。誤字の指摘、ありがとうございます。あと自信を持って下さい。何回も謝る様な事貴方様言ってませんよ( 'ч' ) (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - なってしまいます。うぅ…文章が長くなってしまいすいません…失礼しました… (2022年7月28日 9時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - すいません…自分なんかが初コメでおこがましいと思いますが、第四十七話の「再会」の最後の方で『あの時は彼が』の後が『鮭の飲み過ぎ』になっていました。恐らく『酒の飲み過ぎ』だと思います。このままでは夢主の中で、条野さんがしゃけを飲んで酔う人に (2022年7月28日 9時) (レス) @page49 id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:肉塊 | 作成日時:2021年9月24日 3時