第四十四話「Good night」 ページ46
「ヘックシッ」
時刻は深夜十二時を回っており、夜の冷たい風が薄着の肌を直撃する。深夜なのにも関わらず横浜は相変わらず明るく多くの街灯が夜を照らす。
「踊った事ですし、帰りますか。」
「まだ宴会は終わってないの?」
私が彼にそう疑問を投げると彼は「宴会に戻りたいのです?」と言わんばかりの表情を浮かべる。
「ど、何処に帰るのよ。」
「貴女の家にですが?」
「は?」
予想外の返事に拍子抜けな反応を取ってしまう。え、私の家なんて知ってるの?私の家に上がらないでしょうね?
「貴女の思っている事なんてバレバレですよ。Aさんを家に送り届けるだけです。その後に私は宴会場に戻り隊長達を連れ帰ります。」
「良かったわ。貴女が私の家を知ってるなんてホラーだわ。」
「私を化物と勘違いしていませんか?」
そう言われた瞬間、体が倒れ込み浮く。この感覚を覚えているぞ。
「貴方、お姫様抱っこ好きね。」
「おんぶでも良いんですよ。肩車とか。」
二十歳の女子大生がドレス姿でおんぶに肩車。夜であれ少し幼稚過ぎは、と思い渋々お姫様抱っこを了承する。いやまあ、お姫様抱っこも見ていてしんどいが。
「では、案内をお願いします。」
「下ろして頂戴。」
空を飛ぶ様に電柱の上を軽々と移りながら移動し、遂に私の家の庭に到達する。段々とこの移動に慣れてきたようで私は彼の腕の中で夜景を眺めていた。私の家は庭付きのマンションで両親が家賃諸々の生活費を払ってくれている。勿論一人暮らし。
「住所覚えました。」
「んげえ。」
私が嫌そうな反応を取ると、面白そうに「暇潰しに来ます。」と言ってきた。切実にやめてほしい。
「では、私はこれで。」
早速彼は私を送り届けるという仕事を終わった為直ぐに宴会場へと戻ろうとする。
「待って。」
私の声に彼は前に進む足を止め、私の方へ体を向ける。またも優しそうな表情で微笑む彼に調子が狂うと思いながら私は口を開く。
「一緒に抜け出してくれてありがとう。ダンス、練習しとくわ。」
「それはそれは、どうも。また踊れる日を楽しみにしております。」
「あと!」
急に大きく放った声に彼は首を傾け「まだ何か?」と聞く。
「…私を変えれると良いわね。」
自分は何を言っているんだ、と感じたが条野さんはそんな私の考えを見透かしたのかこう言った。
「ええ、やりますとも。」
そして彼は庭の柵から倒れ込む様に落ち、私の前から姿を消した。
第四十五話「新たな日常へと戻る。」→←第四十三話「君を変える」
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肉塊(プロフ) - 冬斗さん» わーいありがとうございます〜もっと頭悪い小説にするので何卒〜 (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - そう言っていただいて嬉しいです…!作品いつも楽しく読ませて貰ってます! (2022年7月28日 10時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» いや草。誤字の指摘、ありがとうございます。あと自信を持って下さい。何回も謝る様な事貴方様言ってませんよ( 'ч' ) (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - なってしまいます。うぅ…文章が長くなってしまいすいません…失礼しました… (2022年7月28日 9時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - すいません…自分なんかが初コメでおこがましいと思いますが、第四十七話の「再会」の最後の方で『あの時は彼が』の後が『鮭の飲み過ぎ』になっていました。恐らく『酒の飲み過ぎ』だと思います。このままでは夢主の中で、条野さんがしゃけを飲んで酔う人に (2022年7月28日 9時) (レス) @page49 id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肉塊 | 作成日時:2021年9月24日 3時