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芝生の上に静かに着地し、刀を鞘へと収めたAはハートの女王が崩れて消えていくのを確認して、痣丸がブロットの浄化を行ったのを確信した。
しかし、"痣丸が浄化を行うことが可能で、ブロットを浄化した"という事実を知っている者は誰一人としていない。

つまり、今この場では、Aは暴走しているリドルのことを太刀で傷つけたという認識をされているのだ。


「こっ、の……!!」


憤慨しているトレイにAは胸ぐらを掴まれ、頬を思いきり手の甲で叩かれた。
パァンっという乾いた音が響く。
叩かれたことによって顔を俯かせているのに加え、尚且つ長い紫色の髪が乱れたことによって彼女の表情は伺えない。
慌ててケイトが二人を引き離したが、その瞳は揺らいでいて不安さを隠せていなかった。


「殴らなかっただけ有難いと思ってくれ……!!」

「ちょ、ちょっと落ち着いてよトレイ! ちゃんとリドルくんのこと見てってば! ほら!」

「でも今、Aはリドルのことを傷つけて!」

「あーもー! いいから見ろってば!」


ケイトに無理矢理方向転換させられたトレイは不満そうであったが、その光景を視界に捉えた途端に表情を明るくさせた。
何故ならば、目を覚ましていないものの、リドルは体に傷一つない状態で唸っていたからである。
急に胸ぐらを離されたAは、咳き込みながらブラウスの襟元を整えている。

すると、何処からか声が聞こえてきた。


――ボクは、ずっと真っ赤な苺のタルトが食べてみたかった。
――たまに通りかかるケーキ屋さんの、ショーウィンドウに飾ってある宝石みたいなタルト。

――分刻みで詰め込まれる、ありとあらゆる学問。出来なければ出来るまで延長される学習時間。
――でも、これがボクの『普通』だった。

――トレイとチェーニャと遊ぶのは凄く楽しかった。知らないこと、やったことない遊び。
――二人は、沢山教えてくれた。
――それから、一日一時間の自習時間は、毎日お母様に内緒で部屋を抜け出した。

――真っ白なお皿に乗った、真っ赤な苺のタルト。ボクにとってはどんな宝石よりキラキラ輝いて見えた。
――一口食べたタルトは、凄く甘くて。食べたことがないくらい美味しくて……

――ボクは一口ずつ味わいながら、夢中になって食べた。


"時間を忘れて"

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にゃーちゃん - とても面白いです!これからも頑張ってください! (2021年5月16日 20時) (レス) id: 6c3b400c86 (このIDを非表示/違反報告)
しおあめ。(プロフ) - 突然のコメント失礼します。フロイドが主人公につけたあだ名の"クリオネ"は、すでにオルトを指すものとして使用されていたと思います。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: e70718cc0c (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり - はぁーー好みです!面白いです!! (2020年5月30日 16時) (レス) id: fe50b1b3b6 (このIDを非表示/違反報告)
蝶妃 - 夢主ちゃんとキャラの絡みが見ていて面白いです!マレウス様やリリア様ともっと絡んで欲しいですね。これからも頑張ってください!! (2020年4月8日 7時) (レス) id: 1fa4972d94 (このIDを非表示/違反報告)
リリア - 初めまして、読んでいて楽しい作品ですね、主人公のキャラも結構好きです。勿論ゆるりさんのペースで更新頑張ってください (2020年4月7日 22時) (レス) id: 008426968d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆるり | 作成日時:2020年4月2日 1時

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