白を黒が染める

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突出したAに向けて切れ味の良さそうなトランプや、薔薇の花、更には薔薇の木が飛ばされる。
魔法によって強化されているそれらに怯むことなく、彼女は糸を操作して全てを切り刻み、振り落として難を逃れた。
そのままリドルの後ろに現れた、ドス黒いオーラを放つハートの女王の持つ薔薇の木に飛び乗って腕を駆け上がっていく。

きっと後ろのハートの女王こそが、ブロットが具現化されたものなのだろう。
目で追えないような速さで彼女に近寄ると、Aはそのまま顔部分に回し蹴りをお見舞した。


｢俺のドゥードゥル・スートがあるからって無茶し過ぎだ！！｣

｢ていうか、何あの運動神経！？｣


くるりと回転しつつ、トレイとケイトのいる場所まで跳び退けば二人から総ツッコミされる。
ケイトは漸く、初めて会った時にサバナクロー寮に興味を持っていると彼女が語っていた理由が分かった。
因みに、仲良し四人組はドワーフ鉱山の際に耐性をつけたのか、心配しながらも彼女の身体能力をアテにもしている。
現に今、ハートの女王が集中的にAを狙い始めたことによってエース達のマークが外れて攻撃しやすくなっていた。

ここでふと、Aは"ブロット"が日本でいう所謂邪気ではないかと考えつく。
それならば決着は早く着くかもしれない。
何故ならば、もしそこがイコール関係ならば手っ取り早く解決する手段を持っているからだ。


｢――顕現せよ、痣丸｣


悩んでいる暇などない、手当り次第行動に移す他にリドルを助ける方法はないだろう。
そして、Aは自身の霊力を使用して愛刀・痣丸を顕現させた。
唐突に現れた刀にユウは驚愕し、思わず大きな声で驚きの声をあげてしまう。


｢痣丸、彼の身体に纏わりついている邪気のようなモノを見れますか｣


カタリ、刀が揺れて音を立てた。


｢ブロット……あれは貴方で浄化可能でしょうか｣


カタリ、もう一度刀が揺れて音を立てる。
痣丸の答えは是、これのみ。
つまりはブロットを邪気とみなし、浄化をすることが可能ということだ。

Aを足を肩幅より少し小さめに開いて、腰を落とした体勢で痣丸の鯉口を切る。
そのままリドルに向けて一直線に、今までよりもゆっくりめに駆け出した。


｢邪を祓え、禍を滅せ。その身に宿す七つの罪源、禍事罪穢(まがことつみけがれ)を喰らい尽くせ｣


そして、彼女はリドルの身体(ブロット)を斬り捨てた。

3→←深紅を斬り裂く

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