その10 ページ36
待ち合わせ場所は高杉さんが指定してきた。そこへ向かうと、何時ぞやの料亭。
女将は私の顔を見るなり、案内する。どうやらこの間の件で私の顔を覚えていた様だ。
ついに私も顔パスされる側になったか、なんてにやけていると、この間とは違う部屋に通された。高杉さんの姿はまだない。
大人しく待っていよう、用意されていた料理に手をつけようとした時だった。
ーー「あの、お客様...」
女将が襖を開けて、困った様な顔をして声をかけてきた。
「高杉様から、伝言を言付かりまして...」
女将からの伝言は、やはり予想通りの物で。幾らポジティブ思考の私でもそれは流石に応えた。
...何で精一杯おしゃれした日に限って。
仕事と言われれば仕方ないとは思うけど、本当に仕事なのかもわからないし、こうやってドタキャンされる度に、彼に対する不信感も募っていく。
それを掻き消す様に只管酒を煽る。そんな私に女将が心配そうに声をかけてくる。
「これ頂いたら帰ります」
「こんな時間に女性一人は危険です。お迎えに来てもらいますか?」と言う女将に、大丈夫だと伝え、足早に店を出た。
先程までは何とも無かったが、店を出た途端に足が思うように動かない。頭はこんなにも冴えてるのに。ふらふらと千鳥足で船を目指していると、ポツリと頬に雫が垂れてきた。
「...最悪」
本降りになる前に駆け出す。ふらふらだった足元が突然回復するわけでもなく、そのままビタンと地面に倒れこんだ。膝からは結構な量の血が流れている。
「これは後に響くかもな」
何処か他人事に感じるのは、酒のお陰で痛みを感じないからか。
初めて誘われたデートはキャンセル。突然の雨で折角の化粧も髪も台無し。オマケにこの年にもなって何もない所ですっ転ぶなんて。
「...何やってるんだろ」
.
服は乱れ、ずぶ濡れでボロボロの私を途中すれ違う隊士達に変な目で見られ、まるで触らぬ神に祟りなしいわんばかりに避けられていく。普段の私なら殴りかかっている所だが、今はそんな気にならなかった。
ーー「今日は楽しめたかい?」後ろから掛けられた声に思わず反応する。
「...別に。見ての通りよ」
「酷い有り様だ」
「...笑いたきゃ笑えば」
「それに酒の臭いがする」
「...悪かったね。そうでもしないと正気で居られなかったの」
そう言うと神威さんは何かを考える様な素振りをする。そして私の腕を取ると、歩き出した。
「行こう。どうせ此所には居たくないんだろ?」
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ソラ - りおさん» コメントありがとうございます!思い付きで更新しているため、不定期になってしまい、読書の方には迷惑をかけております汗なるべく更新していきたいと思っているので、よろしくお願いします!♪ (2020年2月12日 18時) (レス) id: c2cc8b33f9 (このIDを非表示/違反報告)
りお(プロフ) - 高杉さんかっこいい…… ここからの展開が楽しみすぎます、!!! そして主様更新頑張ってくださいッ (2020年2月12日 16時) (レス) id: f7e6660386 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - きょこさん» コメントありがとうございます!また更新が遅れて申し訳ないです...。きままな更新で行きたいと思ってますので、ちょくちょく覗きに来てくださると嬉しいです♪ (2020年2月12日 0時) (レス) id: 64cc8cd8ee (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 沖田レイアさん» ありがとうございます〜!そう言って貰えると大変嬉しゅうございます♪亀更新で申し訳ないですが、最後までお付き合いくださいませ。。 (2020年2月12日 0時) (レス) id: 64cc8cd8ee (このIDを非表示/違反報告)
きょこ - 続き楽しみにしてました!これからの展開が楽しみー!はぁ…無理やり腕掴まれたい… (2020年1月28日 23時) (レス) id: 6828360e61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソラ | 作成日時:2019年10月30日 14時