君の心に私はいますか？《黄瀬涼太》

Look at me 21 ページ23

別れろと言われて別れられるほど今の状況は単純じゃない。





確かに黄瀬君のしていることは最低極まりないけど私だって





♪〜♪〜♪





携帯の着信音を聞いて、起き上がる。





ディスプレイに表示された名前に通話ボタンを押そうとしていた私の指は止まる。





"黄瀬涼太"





彼が私に伝えようとしている言葉は何か。





別れの言葉なら別にそれでもいい。





携帯を耳に当て、通話ボタンを押した。






『………もしもし』






黄瀬「…A、ごめん。怒ってるっスよね」





真面目な話をするとき黄瀬君は私を呼び捨てにする。





つまり






黄瀬「でも俺はっ！………俺は…Aと別れたくない」






『………え？』





予想外の言葉。






『どうして…？』





なんで付き合ってるか分からないって自分でも言ってたのに。






黄瀬「…確かに浮気…してたし、Aに不満もあったけど…それはなんとかなることじゃないっスか。でも別れたら…もうAが手の届かない所に行っちゃいそうで怖い…」






『黄瀬君…』






黄瀬「大好きだから…ううん違う。愛してるからAと離れたくもないし別れたくもない」






『っ……』





初めて聞いた愛してるという言葉。





まさか自分に向けられる日が来るとは思わなかった。





すごく嬉しい。





嬉しいけど、どうしてこんなにも不安になる？





縛られているような、まるで沈んでいくような感覚。






『私も黄瀬君とは別れたくない』






黄瀬「じゃあ……！」






『でもすごく傷付いたってことは分かってほしい』






黄瀬「っ………そうっスよね…分かってる」





でも別れないよ。





だって別れたら罪滅ぼしにもならないから。

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