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第41話 ページ44





今朝のことを思い出そう。

ポートマフィアに正式にと云う勧誘を受け、其れが森さんからの"合図"だと気付いて逃亡した。

「先ずは、中原さんに黙っていたことを御詫びします。私を見たい(・・・)と言う森さんの意向です」

一月の内に、マフィアは私を懐柔したかった。

だから出来る限りの自由を許した。

私が信じられ、信じるように。

捕らえ、座敷牢に繋ぎ、壊して依存させても良かった。

其の方が幾分も早く、確実。

けれど、そうしなかったのは一重に_

「私の異能力は、吐いた嘘が真実に成る能力。私を信じる人の傍でしか行使が出来ません」

中也が小さく息を飲んだ気配がした。

制御出来ない訳ではない。

只、余りに都合が良い為に制約があるだけ。

「若し、信じる人が傍に居なかった場合」

独りで嘘を吐いたなら。

「私は信じる人のもとへと転移し(とび)ます」

世界から私を信じる人が消えた場合、恐らく私はまた世界線を越える。

10年前に、此の世界へ来たように。

一月前に、此処に来たように。

「探していた物は、私の信じられるものです。今朝は其れを指標にしてとびました」

だから、指輪を持つ太宰さんのもとへととばされた。

明確に指輪と分かっていなかったから、位置がずれて川に沈む羽目になったが。

「其れで、見つけられたかい」

ちっとも驚いた様子のない森さんは、笑んだまま問うてくる。

私の顔を見て、答え合わせをしようと誘うように、教師が生徒に発言を求めるように。

捕食者の瞳を正面から見つめ返して、微笑んだ。

「見つけました」

美しく成長した彼を。

私の唯一、存在を示してくる大切な指輪を。

「君の異能力の行使に必要なもの、だね」

「結局は精神的なものですけどね。異能力を使う度にとんでいたら、鬱陶しくて敵いませんから」

川の中ならまだしも、空中や海の底にとぶ可能性だってあるのだ。

指輪があれば上手く(・・・)やれると、此の身に流れる血が、いつもの勘がそう確信させている。

「鬱陶しい、か。狙った人物のもとへ転移出来ると云う能力は恐ろしいものだよ?」

そんなもの(・・・・・)は只の副作用です。私に出来るのは嘘を吐くことだけですよ」

行く先の分からない転移ほど厄介なものはない。

暗殺、闇討ちには行使しないと含ませれば、森さんは其れでも笑みを浮かべる。

「あと一時間だA君。そろそろ条件の提示を始めよう」

「では暫し休戦ですね。お茶を淹れますよ」

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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時

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