第26話 ページ27
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立て籠っていた犯人が投降し無害を象徴するように、両手をあげる。
「本当に…乱歩さ、お願いですから」
戻った部屋には人が増えていた。
見知らぬ私に警戒心と注目が集まるのは、腰にくっついている男のせいだろう。
引きずるようにして出てきた私は太宰さんを見る。
「太宰さん、此れどうにかなりませんか」
「何故私に助けを求めるんだい?」
「乱歩さんの次に切れ者のように見えるので」
正直にそう言えば太宰さんはへぇ、と大人びた微笑を浮かべる。
直視するのが辛いぐらい美形だ。
「あ、敦くん…」
助けて呉れ、と目で訴えるとまた可哀想におろおろしだした。
「えっと僕は」
御免な、頼る相手を間違えた。
守ってくれるんじゃなかったのか。
まぁ害はない…否、大有りだ。
「乱歩。困らせたい訳では無かろう」
再び膠着状態に陥りそうになったのを制したのは福沢さんだった。
厭まぁ、半分貴方のせいですから責任取って呉れないと
「嫌だ! 僕はAと寝る!」
「「寝る?!」」
バッ、とまた私に視線が集まった。
一寸待て。
私が一番驚愕しているんだ。
「また何を言い出すんですか」
「いーやーだッ!」
「ちょ、危ない」
常識がまるで通用していない。
何が嫌だだ可愛いを通り越して最早恐怖を覚えてくる(早口)。
無論、命の恐怖だ。
刀に手が掛かっているし、何処からか底冷えするような殺気を感じる。
「もう、本当に_」
「嫌だ嫌だ嫌…」
いい加減にして、と。
乱歩の胸ぐらを掴んで引き上げた。
腹立たしいことに相手の方が背が大きいので、乱歩は中途半端に足をつく状態になる。
その足を払い、先程閉めたばかりの扉に体を押し付ける。
動こうとした背後の人たちを牽制する意味も込めて、扉を拳で殴った。
「………」
静寂が殴打の音の後に広がり、至近距離で殴る音を聞いた乱歩はびくりと体を震わせる。
「……っはぁ、はぁ、」
一呼吸でやったものだから息が苦しい。
乱歩を締め上げる右手は重さに痺れそうだし、殴った左手にはじわじわと痛みがやってくる。
「っはぁ……いい加減にしやがれよクソ餓鬼」
小さく呟いたけれど、密着している乱歩と盗聴している太宰さんには聞こえただろう。
胸元から顔をあげていくと、泣きそうな乱歩と目が合った。
「…乱歩」
怯えた翡翠色、細い身体、不遜な態度。
チカチカと視界が眩む。
酷く寒いのに熱い、鈍痛がする。
此れは__
「__あぁ、ごめんね…」
意識が白に沈む。
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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時