イッシュの狂戦士は (ページ25)

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何も反応しないキバナを不思議そうに見つめる少女の目をしばらく見つめ、ハッとすると、取り繕うように咳払いをする。

自身の想像以上に似合っており、自分のファッションセンスの高さを再認識したと同時に、改めて少女の顔の造形の良さを痛感する。

笑ったらきっと、もっと可愛くなるなどとは口が裂けても言えず、その代わりに少女の髪を手で梳いて、

「…似合ってる。」

その一言だけをなんとか絞り出した。

「私も気に入りました。たまに着ると思います。」

そう言った少女は、バッグから財布を取り出す。

「じゃ、お会計で。着替えると時間がかかるのでこのまま着ていきます。」

自分が払うものだと思っているのか、そのまま会計に行こうとする少女をキバナは再び止める。

「こういうのは男が払うものなんだよ！１回脱げ、時間かかってもいいから。」

「いえ、私が払います。恩を返す事が出来ないので。」

悲しいことに、少女は自分が恩を返せるか返せないかで物事を見るきらいがある。

ポケモンにはどこまでも尽くし、自分のエゴだと言い切る少女は、自分に尽くされる事を良しとはしない。

だがそこで引き下がるキバナではない。

「これはツアーの一貫で、お前は特別枠の客なんだよ。恩とかそんなん関係ない。ただのオプションだよ。」

そう言って少女を試着室に戻す。

こうされてしまっては少女は着替える他ない。

「ほら急いで着替えろ」

「さっき時間かかっても良いって言ったじゃないですか！」

カーテン越しにそんなやり取りをする2人は、出会った当初よりも少しだけ、少しだけ仲良くなっていた。

*

次に訪れたのは、キルスクタウンだった。

英雄の足湯をメインとしていたが、キルスクタウン内では自由行動だと伝えられた。

ファンたちはキバナのあとを着いていき、少女はそれを見送ると、特に見たいところも無いため、足湯へと向かった。

「温かいね～」

ホカホカと立ち上る湯気の中で、少女とポケモンたちはまったりと時間を過ごしていた。

ジャローダは尻尾でパシャパシャと湯を掻き回して遊び、フカマルは丸いボディを活かしてプカプカと浮いていた。

(こういう所にきても、シュラだけボールから出せないの嫌だな…)

出したが最後、例えお湯であっても一瞬で凍りつき、騒ぎになってしまう。

誰もいない自然の中で、ポケモンたちと気ままに遊ぶのが好きな少女は、そんなモヤモヤした気持ちのままお湯を浮かんでいるフカマルにかけた。