″もしも″の七 ページ7
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予備の提灯ぶら下げて、裏山を歩いていた。
いつもより多い荷物に、いつもより早く息が上がる。
やっとの思いで休憩ポイントまで辿り着くと狐とリスのお出迎えで。
何だか疲れが一気に吹き飛んだ気がする。
「ねぇ狐。昨日の人の所まで連れて行って欲しいんだけど‥出来る?」
少し考えて、頷いた。
ありがたい。
いくらこの裏山が庭のようだったとしてもやはり自然。舐めない方がいい。逆に舐めたら死んでしまう。
でも、無理はしないでね?狐。
「皆も来る?昨日の人の所」
来ないだろうと鷹を括っていたら、意外や意外。
全員付いて来てくれるそう。
私を守ろうとして、なのか私を信頼してなのかはわからないけど、ありがとう。
やっぱり頭数が多い方が安心する。
「よし!じゃあ行こうか。狐、先導をよろしく!」
肩に乗っけたリスを撫でながら、私は狐の後に続いた。
気配を殺してそっと木から覗くと、昨日と同じ格好で寝ているあの人。
昨日から今日までずっと寝ていたのかな?
だとしたら本格的に体調が悪いのではないか。
木の影から体を出して呼んでみる。
「こんばんは。大丈夫ですか?」
うっすらと目が開いた。
良かった昨日より体調は良さそう。
昨日と同じように両手を上げてヒラヒラさせる万国共通の敵意はありませんアピールをしながらゆっくりと近づく。
じっとこっちを見ているけれど、昨日みたいに斬りかかっては来ないみたい。
良かった。
「食べ物と水を持ってきました。いりますか?」
「……この着物は」
「あ、私です。お節介でしたか?すみません」
初めて声を聞いたな。
すっごくいい声だ。
何だか少し仲良くなれたようで嬉しい。
「…いや、ありがとう」
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レイレイン - 素敵な話ですね。とても感動しました。ありがとうございます。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: 5a04a92c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2019年4月1日 16時